ウクライナ情勢で判明 未来戦争の命運を握るのは「無人航空機」「衛星通信網」のタッグだ
無人航空機の歴史をたどる
ウクライナ戦争で、ウクライナ軍を支えているのはトルコ製の攻撃型無人航空機と、スペースXが提供する衛星インターネット通信のスター・リンクと言われている。しかし、実際にはその組み合わせで威力が増している。
無人航空機の開発は昔からあり、第2次世界大戦中にはアメリカが大型爆撃機のB-17を無人化して、ドイツ軍の防御の硬い目標に自爆攻撃をする計画だった。また日本軍もロケット戦闘機「秋水」でこれを無人化して、B-29に体当たり攻撃をする計画だった。ともに当時の誘導技術では十分な性能が期待できないとして、開発は頓挫した。
戦後、無人航空機は戦闘機や地上の対空砲の標的機として開発が進んだ。それまでは、有人機が標的をえい航する形での実験や訓練が主だったが、無人航空機が開発されることで実践的な訓練ができるようになり、多くの国で開発が進んだ。これによって無人航空機の無線誘導の技術が格段に向上した。ちなみに自衛隊も数種類の無人標的機を開発し、使用している。
無人航空機に次の転機が訪れたのは、米軍が開発した「MQ-9 リーパー」の出現だ。リーパーは2007年から運用が開始されたが、衛星通信を使い、アメリカ本土からコントロールして、ヘルファイア対戦車ミサイルや小型誘導弾を利用して、テロ組織やイランの要人の暗殺を決行している。
この機体には偵察などを主な任務とする非武装型も開発され、各国での採用が進んでいる。しかし、この機体も偵察や要人の暗殺などに使われるぐらいで、戦術自体を変えるまでではなかった。
ナゴルノ・カラバフ紛争という「契機」
しかし、それまでの無人航空機の概念を変える活躍が、2020年に起こった。アゼルバイジャンとアルメニアの間のナゴルノ・カラバフ紛争である。両国は1994年までの紛争でアルメニアがアゼルバイジャンから領土を奪い取っていたが、2020年にアゼルバイジャンが失地回復に乗り出す。
両国の紛争は長引くと予想されたが、アゼルバイジャンが導入したイスラエル製の徘徊(はいかい)型自爆無人航空機(IAI製ハロップ)と偵察ロケット、誘導爆弾を使って遠隔操作で攻撃するトルコ製の「TB2」を組み合わせてアルメニア軍を圧倒、短期に勝利することになる。
ステルス性能の高いハロップにより、アルメニア軍のレーダーや対空ミサイル、対空火器を破壊してアルメニア軍の対空能力をまず無力化した後、敵上空をTB2が飛行して見つけた戦車や装甲戦闘車、重砲等を片っ端から破壊した。アゼルバイジャン側の発表によると、その数は戦車250両、戦闘装甲車50台、自走砲17台を含み、アルメニア軍はこの無人航空機の攻撃だけで崩壊したと言っても過言ではなかった。
ナゴルノ・カラバフ紛争での無人航空機の大活躍は
「これからの戦場を塗り替える革命的な戦いだった」
との評価を生む一方で、
「小国同士の紛争なので活躍できたので、超音速戦闘機が無数に飛び交う大規模な戦場では役に立たない」
との評価もあった。しかし今回のウクライナ紛争でまたトルコ製のTB2が大活躍して、相手が世界第2位の軍事大国であっても、無人航空機が大活躍できるということが証明された。