無防備すぎる日本の「選挙カー」 今後は防弾ガラス必須か、安倍元首相銃撃を機に考える
安倍晋三元内閣総理大臣が7月8日、銃弾に倒れた。このことから分かるのは日本の選挙運動における安全性の低さだ。
無防備な日本の選挙カー

安倍晋三元内閣総理大臣が7月8日、銃弾に倒れた。戦後、首相経験者が襲撃されて死亡したケースは例がない。
筆者(日野百草、ノンフィクション作家)は日本の選挙活動の無防備さを以前から危惧していた。大きな選挙を末端ながら手伝ったこともある身として、恐れていた。それは現実となった。
まず日本の選挙カーは無防備だ。防弾ガラスもなければ、対爆装甲すら持ち合わせていない。屈強な大人がたたけば窓ガラスは割れ、ドアはへこむようなただのワゴン、バン、時に軽トラックなどだ。一般的なキャブオーバー型の乗用車を、選挙カーに仕立てただけである。
驚くのは、首相や大臣、一般議員が国政選挙でもそれら乗用車を使っていることだ。大きな街頭演説では、マイクロバスを改造した選挙カーの上で複数名が演説しているが、海外の政治家の演説で見られるような防弾板もない。日本が平和な証拠かもしれないが、世界的に見ても特殊で、選挙カーも昭和のままだ。
そもそも、選挙カー自体が日本独特の政治文化だ。日本では市町村議員はもちろん大臣や首相でも同じような選挙カーで走り回り、駅前で演説する。時に聴衆の中に入って誰彼構わず握手に応える。
筆者はかつて新宿駅で某大臣の演説を聴いてしばらく、新宿駅地下の公衆トイレに入り用を足したのだが、隣に来たのはなんとその大臣だった。緊急なので仕方がないのだろうが、筆者が万が一にも危害を加えるような人物だったら大変だ。
入り口にはSPがいたのかもしれないが、トイレ内は筆者と大臣、個室トイレも誰かが使っているような状態だった。その個室の中に、危害を加える人物が万が一いるかもしれない。それほど、日本の選挙カーは独特の文化で、無防備なのだ。