まるで現代のシルクロード? 中国と欧州を結ぶ複合輸送路「カスピ海ルート」をご存じか

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NX中国が4月1日から、中国とヨーロッパを結ぶ複合輸送サービスを開始。新型コロナウイルス感染拡大に伴う、中国国内のロックダウンによる物流の混乱に対処すべく、新たなルートを開発した。

トラック輸送という選択肢も

南ルートでDACHSERと一緒に。中国からヨーロッパへのトラックのフルロード(画像:DACHSER)
南ルートでDACHSERと一緒に。中国からヨーロッパへのトラックのフルロード(画像:DACHSER)

 実は、中国とヨーロッパを結ぶ陸上輸送は、トラックによるルートも存在している。

 2020年に新型コロナウイルス感染拡大による物流の逼迫(ひっぱく)により、その利用が急拡大した。ドイツ鉄道の推定によると、2019年におけるトラックによる輸送はわずか620台だったが、2020年には3万6000台まで増えたとのことである。

 北回りルートは、中国国内からカザフスタン、ロシア、ベラルーシ、ポーランドを経由し、約1万1000kmをおよそ16日間で輸送する。一方、南回りルートは、カザフスタン、カスピ海(フェリー使用)、アゼルバイジャン、トルコ経由である。

 ただ、ドイツの物流会社であるDACHSER(ダクサ)社によると、南回りルートは積み替えが必要になり、26日から30日もの日数が必要になる。なお、ロシアによるウクライナ侵攻後は、北回りルートは使用していない。

 運転方法としては、ひとりのドライバーが時間をかけて全ルートを運転する方法と、ふたりのドライバーが交互に運転する方法がある。

 ドライバーふたりの場合、まずひとり目が休憩を挟みながら9時間運転、続くふたり目も同様に9時間運転し、その後ふたりともに9時間休憩する流れを1サイクルとしている。そして、中国とヨーロッパの間をこのサイクルを繰り返し走り抜ける。

船舶、陸路、空路の比較

ドイツの放送局WDRのTwitterより引用。「モノの輸送には、これだけのCO2が発生します」(画像:WDR)
ドイツの放送局WDRのTwitterより引用。「モノの輸送には、これだけのCO2が発生します」(画像:WDR)

 現時点で、中国とヨーロッパを結ぶ貨物の輸送方法は

・貨物船
・鉄道
・トラック
・複合輸送(カスピ海ルート)
・航空機

の五つだ。

 コンテナ輸送の中心は、やはり貨物船だろう。一度に運べる量が多く、かつ一番料金が安い。しかし、輸送日数が平均35日かかるというデメリットがある。さらに、ここ最近は港の混雑により、到着の遅れが常態化している。

 輸送日数を考えると、航空機が最も早く、荷物の発送から到着まで1週間あれば十分といわれている。しかしその分、料金は高くなる。

 鉄道とトラックは、輸送日数は15~17日だ。輸送日数および料金面において、貨物船と航空機の中間に位置している。ただし、トラックによる南ルートを使用すると、輸送日数は倍程度かかる。

 今回NX中国がサービスを開始したカスピ海ルートは、輸送日数的には決して早くはなく、報道発表のとおりBCP輸送を中心に利用されると思われる。

 どの輸送方法も一長一短があるが、鉄道による輸送が輸送日数的にも気候変動対策としても魅力的に見えてくる。

 特にヨーロッパでは、気候変動対策として、鉄道貨物の利用促進が活発になっている。ロシアによるウクライナ侵攻を受け、現時点ではトランス=ユーラシア・ロジスティクスの利用は控えられているものの、情勢が落ち着いたあかつきには、需要が著しく拡大するのではないだろうか。

 とはいえ、ここしばらくはサプライチェーンを維持するために、現在使用可能なルートが需要に応じて適宜使い分けられていくものと思われる。

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