「駅前でも汚い車は借りません」 なぜ29歳以下はレンタカーで「清潔さ」「予約のしやすさ」を重視するのか?
サービス業へ姿を変える過渡期

29歳以下の層といえば、ちょうど1990年代後半以降に生まれた、いわゆる「Z世代」と呼ばれる時期にあたる。生まれたときからインターネットやデジタル機器に囲まれて育った、最初のデジタルネイティブだ。ただ、彼らの選び方の変化を、特定の世代が持つ変わった好みとして片付けてしまうのは少し強引かもしれない。
世間やメディアは「タイパ(タイムパフォーマンス)主義」や「読書離れ」といったわかりやすい言葉で彼らを一括りにしがちだが、実際のデータや当事者の価値観とはどこか食い違っている。
例えば近年、小中学生の平均読書冊数は過去最多を記録しており、若者が活字から離れているとはいい難い。また、効率ばかりを求めると思われがちだが、コロナ禍で疎遠になった友人との関係をじっくりと結び直そうとする姿も見られる。メディアが伝言ゲームのように作り上げたステレオタイプな虚像は、当事者のリアルな姿からかけ離れているのだ。
さらには、上の世代が作った枠組みそのものに馴染めないという声も聞こえてくる。お笑いタレントのカズレーザー氏が、Z世代という言葉は上の人が勝手に作ったもので、使うと古く見られると指摘して多くの共感を集めたように(『Sponichi Annex』2022年9月12日付け)、当事者たちは大人に都合よく切り取られることを嫌っている。
持ち家ならぬ「車の所有」から「利用」へと世の中の重心が移るなかで、サービスを選ぶ基準が価格の安さや距離の近さから、いかにストレスなく時間を使えるかという点へ広がってきた。これは彼ら特有の現象というよりも、社会の仕組みそのものが変わりつつあると見るべきだろう。
こうした変化は、なにもレンタカーの領域だけにとどまらない。鉄道やタクシー、そしてカーシェアリングの境目はどんどん薄くなっている。現に、シェアリングの現場は自動車メーカーにとって新しい顧客との出会いの場となっており、若い世代が最新の車や運転を支える新しい仕組みに触れる機会を増やしているようだ。
ここで味わった心地よい移動の体験が、いずれ数年後に特定のブランドを選ぶ行動へ結びついていく。これまでの「作って売る」仕組みから、その後の「使ってもらう」サービスへの緩やかなつながりが、いま確実に形作られつつある。
もちろん、若い世代がこうした体験の心地よさを重視する姿勢がこの先もずっと続くのか、あるいは市場全体へどこまで広がっていくのかは、まだ誰にも見通せない。車の調達にかかる費用がかさみ、物価が上がるなかで、サービスの質を保ちながらいかに全体の費用を抑え込むかという難しい舵取りが、これからの事業者には求められる。
再び価格の安さだけを追い求める動きに戻る可能性も否定できない一方で、デジタル上のやり取りがいっそう便利になれば、形のないサービスへの投資を続けられる土台の確かな企業へ、顧客が集まっていくはずだ。
今のレンタカー市場は、車をたくさん抱えることで成り立っていたこれまでの産業のあり方から、日々のやり取りや手際のよさを競うサービス業へと姿を変える途上にある。この移り変わりの時期を生き抜くなかで、外側の環境の変化に揺さぶられながらも、業界全体の底上げと仕組みの衣替えが同時に進んでいくのだろう。
若い世代が見せている評価の基準の変化は、これからのモビリティがどこへ向かい、どう広がっていくのかを見極めるための、大切な手がかりを示している。