相次ぐ道路陥没――なぜ「25%」の市区町村で土木・建築技師がゼロなのか? 委託拡大でも修繕費が増え続ける理由

キーワード :
インフラ老朽化の危機が表面化している。整備から50年が過ぎ、橋の4割が更新期を迎えるなか、都市部陥没の3割が下水起因という実態が浮かぶ。だが、自治体の土木予算は約6兆円へ半減し、専門職員ゼロの地域は25%にのぼる。縦割りの壁を越え、安全と負担の釣り合いから持続可能な維持への道筋を展望する。

一斉老朽化と局所崩壊のリスク

損傷した道路のイメージ(画像:写真AC)
損傷した道路のイメージ(画像:写真AC)

 国土交通省の資料を見ると、道路が陥没した原因のうち、下水道によるものは全体で約1割、都市部では約3割に達する。過密な都市の地下でインフラが複雑に絡み合い、管路からの水漏れが地盤を削って空洞をつくるためだ。この空洞は全国で96か所見つかっており、排水から出るガスによるコンクリートの傷みに加え、大雨や大雪、地震が引き金になって崩れる不安がつきまとう。都市部では一箇所の崩壊が交通網全体を麻痺させかねない。

 下水道の整備が高度経済成長期に大都市圏を最優先に進められた結果、40年の決まった使いみちの期間を過ぎた管路が埋まったままだ。2025年5月10日には大阪市城東区で約60年前の水管が破れ、路上に水があふれ出た。大阪市では水道管の古くなった割合が

「約52%」

にのぼっており、次々と起こる破裂を防ぐため、地震への備えを兼ねた取り換えが急ピッチで行われている。

 2025年の段階で道路の橋は約4割、トンネルは約3割が完成から50年を超えている。あらゆる設備が一斉に古くなるなか、現場の危険は予定を立てて直せる全体の衰えから、予測できない突然の崩壊へと姿を変えつつある。思いがけない修繕の費用が急に膨らめば自治体の予算のやりくりは立ち行かなくなるため、一斉に使い物にならなくなる前に、見守りと手入れの密度を高めることが求められている。

 政府は2013(平成25)年11月から、壊れてから直すのではなく先回りして手入れを行う仕組みづくりを進めてきた。これに合わせて下水道法や道路法も改正され、多くのインフラで5年に一度の点検が義務づけられた。

 だが、この取り組みは現場に根づいておらず、道路の陥没を防ぐ手立ては進んでいない。点検は義務となったものの、実際の補修は自治体の判断に委ねられ後回しにされがちだからだ。背景には、道路の橋やトンネル、下水道といったインフラの約85%を地方自治体が管理している事情がある。広い地域の交通を支える施設でも維持の費用は自治体が負担せねばならず、地下の補修が地上の陥没を防ぐというつながりがあっても、役所の縦割り予算に阻まれて費用の効果が認められにくい。

 さらに、5年の点検の周期に対して予算が1年ごとにしか組めない時間的な食い違いもある。事前に事故を防いでも

「起きなかった損失」

の価値はその年の決算書に載らないため、修繕を重ねる自治体ほど財政が圧迫される。新しい技術を取り入れても、役所や民間企業にとって具体的な利益が見えにくい。

全てのコメントを見る