物流崩壊の足音に気づかぬ「荷主たち」――改正効率化法7割が不知、2030年“供給断崖”の現実とは
持続可能な物流への転換

データが描き出す背景では、制度、市場、技術といった異なる力が、それぞれ独自の速さで動き始めている。2030年に向かう道筋はひとつではなく、荷主が自ら物流のあり方を整えるようになるのか、現場の限界で網そのものが姿を変えざるを得なくなるのか、いくつもの枝わかれが予想される。
前述した9億tの立ち往生という予測は、これまでの商売のやり方を根本から見直すきっかけを産業界に突きつけている。変化は日々の決断の積み重ねだ。運ぶ力が限られた貴重なものへと変わるなかで、今後は事業者同士が相手を厳しく見極める動きも強まっていく。
ここで求められるのは、これまでの当たり前を社会全体で問い直す姿勢だ。送料無料や即日配送という意識を改め、相応の費用やリードタイムを受け入れることが当然となるよう、働きかけが必要だ(小売)との指摘があるように、物流の持続可能性は一業界の枠を超えた課題となっている。法制度への対応を、事業を続けるための投資と受け止める層が増えれば、物流は費用を抑える対象から、新たな価値を生み出す源へと役割を広げていくことになるだろう。
そのためには、現場が誇りを持って働ける環境作りも欠かせない。適正な運賃のやり取りを定着させ、運び手が将来性のある仕事だと認められるような改革(運送)が進むことで、初めて安定した供給網が維持される。
デジタルを介して情報をわかち合うことは、作業を速くするだけでなく、荷を出す側と運ぶ側が互いの台所事情を知り、柔軟に折り合いをつけるための土台になる。これは産業全体が物流という視点から、自らの立ち居振る舞いを正していく機会でもある。情報の風通しを良くし、協力の輪を広げていくことで、どんな変化にも耐えられる強い供給網が形作られていく。物流のあり方を見つめ直すことは、産業がこの先も生き残っていくための、確かな一歩にほかならない。