「脱炭素の正義」はどこへ消えたのか?──EVバッテリー鉱物9倍需要と人権崩壊の現場とは
EV市場は2025年に2100万台規模へ拡大し、バッテリー鉱物需要は2050年までに9倍に増加する見通しだ。その裏でサプライチェーンの人権リスクが露呈し、企業統治の再構築が急務となっている。
人権重視の資源循環と信頼構築

EUでは2027年2月から、電池の情報を明らかにするバッテリーパスポートの運用が始まる。違反した際の罰則は各加盟国が設ける見通しで、市場からの締め出しや巨額の罰金、企業名の公表は経営にとって致命的な痛手になる。こうした背景もあり、サプライチェーンを透明にする動きは一気に加速するだろう。大手メーカーは入り組んだ管理体制を整える投資を惜しんではならない。
予測によれば、2030年までに世界のEV販売台数は3110万台に達し、街を走る車の累計数は2億3000万台にまで膨らむという。ノルウェーが2025年までに新車販売のすべてを排気ガスの出ない車にする目標を立て、英国やカナダも2035年までのガソリン車販売禁止を法律で決めるなど、各国の政策がこの大きなうねりを作っている。
やがて新しい電池の普及や再利用技術が進めば、素材の調達構造も大きく変わる。リサイクルによって資源が回るようになれば、人権リスクがつきまとう地域への依存を減らすことが可能だ。これは地政学的な不安を取り除くことにもつながるだろう。どのような技術革新が起きようとも、人権を尊ぶ姿勢を貫くことが、市場で信頼を保ち続けるための土台となる。