「良いトラックドライバーでありたい」 そんな善意が企業リスクに変わる? 10%の現場で続く“隠れ手伝い”が荷主を追い詰める
荷主先での私的な交流と作業の実態

もう20年以上前の話である。筆者(坂田良平、物流ジャーナリスト)は、当時勤めていた事務所に出入りしていた佐川急便のドライバーに違和感を持ち続けていた。このドライバーは、ほぼ毎日のように1時間以上、事務員の女性たちと並んで商品の梱包作業を手伝っていたためである。
「数年働けば、数千万円を貯められる」という勢いのある話はすでに昔のものになりつつあった時期だった。それでも、時間を惜しまず働くイメージは同社に強く残っていた。元ドライバーとして佐川急便の現場を知る筆者にとって、このドライバーの振る舞いは、親切が行き過ぎているようにも見えたし、どこか世慣れていない印象も受けた。
「あの佐川さん、なんかいつもいるよね」
ある日、何気なくそう口にした筆者に対し、事務員が答えた。
「坂田さん、気づいていなかったんですか。あのドライバーさん、うちのアルバイトの◯◯ちゃんと付き合っているんですよ」
筆者が業務改善の手伝いをしていた運送会社で、運転日報を確認していたところ、あるドライバーが特定の卸先に不自然に長く滞在していることがわかった。その点を社長に伝えると、社長はにやりと笑い、そのドライバーたちを呼び出した。
「お前たち、またか」
事情を聞くと、このドライバーたちは以前から、かわいらしい事務員がいる積み下ろし先では、あえて棚入れを手伝ったり、検品に時間をかけたりして、気になる事務員との会話を楽しむことがあったという。
「まあ、ほどほどにな」
それ以上強く注意する様子はなく、また荷主側からも特に苦情が出ていなかったため、社長も大きな問題にはしなかったようである。
いうまでもなく、ドライバーも人であり、気になる相手がいる現場では長くとどまりたくなることもあるだろう。業務に支障が出なければ、過度に問題視する話でもない。むしろ、積み下ろし先との関係を良くしておくことは、運送会社にとっても利点になりうる。しかし、この春からはそうした扱いでは済まなくなってきている。