「中国勢にはもう勝てないのか」 世界の企業幹部1000人が打ち明けた「SDV開発」の重い現実――再利用率48%が示す競争条件の変化
ソフトウェア設計思想の分岐点

収益化の壁については、地域の枠を超えて共通の悩みが横たわっているようだ。調査によれば、自動車メーカーの94%が現在載せているSDV機能のうち、有料で提供できているものは半分に満たないと明かしている。その背景にあるのは、
・技術的な限界
・利用者側の意識
だろう。いまの無線更新は不具合の直しが主な役割となっており、利用者がわざわざ対価を払うだけの価値を提示できているとはいい難い。5万ドルから10万ドルもする高額な車を手にする層からすれば、機能が磨かれるのは当たり前の振る舞いとして映る。
同社の自動車&製造業プラクティスにおけるパートナー&マネージング・ディレクターであるヒマンシュウ・カンデルワル氏は、この期待と現実の乖離と、目指すべき真の価値について次のように述べている。
「欧米・日本の自動車メーカーのほぼすべてがSDV機能の収益化に苦戦しているという現実は、多くを物語っています。SDVの本質的な価値は追加収益ではなく、R&Dから生産現場に至る企業全体の効率化にあります。5万~10万ドルの車両を購入した顧客は、OTAアップデートを当然のものとして期待していますが、実際に提供されているのはバグ修正が大半です。また、“ワールドカー”という前提も崩れつつあります。欧米や日本の自動車メーカーおよびサプライヤーは、単にビジネスケースを見直すだけでなく、オペレーティングモデルそのものを再考する必要があります」
不具合を直したという知らせに対して、さらなる支払いを求めるやり方は、なかなか受け入れられないのが現実ではないか。もはや価値の源泉は、目に見える何かを売ることよりも、開発や生産の仕組みを整え、全体の効率をいかに高めるかという一点に移りつつある。
ソフトウェアを使い回す仕組み、すなわち再利用の面でも大きな開きが見られる。中国が48%に達する一方で、米国は31%、欧州と日韓はともに33%にとどまり、15ポイント以上の差がついている。企業の成り立ちで見ると、IT企業の39%に対して、ティア1サプライヤーは19%とさらに厳しい。この再利用率という指標は、開発の現場がどれほど整理されているかを雄弁に物語る。機能を部品のように蓄え、繰り返し使える形を整えた中国に対し、他の地域ではいまだに案件ごとに一から作り上げる古い手法が色濃く残る。開発にかかる人手と時間を削ぎ落とせない体質が、そのまま競争力の差となって表れているのだろう。
メーカーが内製化へとかじを切るなかで、ティア1サプライヤーもまた、立ち位置の変え方を迫られている。これまで彼らが担ってきたシステムを取りまとめる役割は、メーカーの懐へと取り込まれ始めている。情報を囲い込むことで利益を得てきた従来のモデルは通用しなくなりつつあり、ソフトウェアの領域でどのような貢献ができるのか、その力量が問われている。
部品をまとめて納めるという商売から、ソフトウェアの深い階層へいかに関わっていくかという、より本質的な場所へと価値の重みは移っている。