「EV一辺倒」からの解放――1台売るごとに430万円の赤字、フォードが花形部署を畳んでまで回帰する「デトロイトの流儀」
BEV一本化を見直すメーカーが相次いでいる。ただ、HVへの回帰をBEV戦略の失敗とみるのは早い。電池コストや市場、インフラの条件はメーカーや地域ごとに大きく異なり、最適解も変わる。三社の判断の背景にある構造を、データをもとに整理する。
HV集中の収益戦略

前提条件の違いを冷静に眺めれば、三社の下した判断はいずれも筋が通っている。
トヨタは30年近くにわたってHVの技術を磨き続け、量産コストの面でも他社を大きく引き離している。米国でカムリとRAV4をHV専用に切り替えたのは、自らの強みが最も生きる領域に力を注ぎ、利益を確実に残そうとする意志の表れだろう。すべての市場を一気に塗り替えるのではなく、機が熟した地域から順に広げていく。投資の効率を重んじる、同社らしい着実な歩みだ。
BMWの動きもまた、工業的な合理性に基づいている。BEV専用の「ノイエ・クラッセ」を進める一方で、多様な動力源に対応できる「CLAR」という土台をあえて並行して走らせる。市場がどちらに転んでも、各国の需要に即座に応えられる体制を整えているわけだ。エンジン車を2030年代まで残すと公言したのも、不透明な将来に備えてリスクを分散させる、老練な立ち回りといえる。
一方、フォードは膨らみ続ける赤字を前に、大型BEVへの投資を潔く見直した。浮いた資金をEREVや低価格モデルへ振り向ける決断は、「今の大型EVでは採算が合わない」という現状認識に基づいている。これは決して後退ではない。経営資源をいたずらに浪費することを避け、自らが勝ち残れる領域を見定め、限られた資金を集中させる。生き残りのための、極めて現実的な守りの一手なのだ。