「EV一辺倒」からの解放――1台売るごとに430万円の赤字、フォードが花形部署を畳んでまで回帰する「デトロイトの流儀」

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BEV一本化を見直すメーカーが相次いでいる。ただ、HVへの回帰をBEV戦略の失敗とみるのは早い。電池コストや市場、インフラの条件はメーカーや地域ごとに大きく異なり、最適解も変わる。三社の判断の背景にある構造を、データをもとに整理する。

電池コストと収益悪化

自動車(画像:Pexels)
自動車(画像:Pexels)

 BEVで利益をあげるには、電池コスト、販売台数、そして利益率の三つを噛み合わせなければならない。どれかひとつが欠けても、赤字の泥沼から抜け出すことは困難だ。電池の世界平均単価は108ドル/kWhと過去最低の水準まで下がった。しかし、

・大型のピックアップトラック
・スポーツタイプ多目的車(SUV)

では、一台あたりの搭載量が多すぎてコスト低下の恩恵を十分に受けられない。むしろ、航続距離を伸ばそうと電池を積めば積むほど車体は重くなり、効率が落ちてさらなる大容量化を招く。この悪循環が、メーカーの利益をじわじわと削っている。

 象徴的なのがフォードの「F-150 Lightning」だ。当初は4万ドル程度での販売を見込んでいたが、2025年モデルでは5万5000ドル前後まで跳ね上がった。価格の上昇は買い手の熱を冷やし、量産効果によるコストダウンを阻む。大型で高価格なモデルから市場を広げようとした手法は、投資回収を極めて難しくした。同社が次世代で低価格の中型モデルに軸足を移したのは、これまでの目算を見直し、収益の柱を立て直すためだろう。2027年の中型ピックアップ投入に向け、電動化の灯は消さずに耐える構えだ。

 メーカーが同じでも、挑む市場が変われば前提条件は一変する。北米のように航続距離への要求が厳しく、充電インフラの整備状況にムラがある地域では、走行中の電池切れは切実な不安としてつきまとう。そこで、電気で走りながらガソリンで発電する方式が注目されている。既存の給油網を使いながら電動の良さを取り入れる、極めて現実的な選択だ。

 ひるがえって欧州を見れば、厳しいCO2規制が先行し、BEVへの移行を急かされてきた。だが、産業用電力のコストが米国の2倍を超えるなか、製造現場が競争力を保つのは容易なことではない。規制の理想とエネルギーコストの現実が、うまく噛み合っていないのだ。対照的に中国は、強い主導力で充電設備を整え、BEVを受け入れる土台を築き上げた。

 市場ごとに、収益が成り立つ仕組みはまるで違う。技術の選び方をひとつに絞り込むことなど、到底できないだろう。それぞれの土地のエネルギー事情や人々の暮らしに寄り添い、手法を使いわける。そのしなやかさこそが、これからの競争の行方を決めるはずだ。

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