「日本の基幹産業」を襲うナフサ危機! 自動車部品を支える工業用ゴムの「54%」が示す供給断絶の予兆
業種をまたぐナフサ依存の広がり

調査結果を読み解くと、ナフサへの依存は特定の業種にとどまらず、産業の深層にまで網の目のように広がっている実態が見えてくる。
まず目を引くのは化学分野の数字だ。化学工業全体の67.2%がナフサ関連に該当し、なかでも接着剤は87.3%、界面活性剤は84.0%という極めて高い比率を示している。これらは塗料や内装材といった目に見える部材の、いわば「命」ともいえる素材だ。
ゴム分野も無視できない。ゴム製品全体の51.5%、工業用ゴムに限れば53.9%がその影響下にある。タイヤやホースといった交換が避けられない消耗部材の多くが、ナフサという一本の川から流れ出ている。
さらに影響は意外な領域にも及ぶ。印刷業で37.6%、紙加工業では48.9%が該当しており、一見すると素材とは遠い領域さえも無縁ではない。とりわけ塗工紙は80.1%に達しており、物流ラベルや包装材を通じて、あらゆるモノの流通コストに跳ね返ってくる構図だ。
車という存在も、機械の集合体ではない。石油化学が織りなす壮大なサプライチェーンの上に成り立つ危ういバランスの結果といえる。ゆえにナフサの供給制約は、個別の部品不足という枠を超え、製造現場全体の動きを鈍らせる重石となる。
足元のナフサ不足は、中東情勢の緊迫が生んだ供給不安と、それにともなう価格高騰が主因だ。政府は必要量の確保を掲げるが、現場ではすでにエチレンの減産や溶剤不足が現実のものとなっている。もはや議論の焦点は「量」の確保から、いかに滞りなく「流す」かというフェーズへ移った。
日本のものづくりを支えてきたのは、細部まで磨き上げられたジャストインタイムという仕組みだった。しかし、供給が完全に止まらずとも、わずかな遅れや偏りが生じるだけで、この精緻なシステムは脆さを露呈する。
調査によれば、実になんと96.6%の企業が原油高の影響を訴えている。事業縮小の可能性について「6カ月未満」と答えた企業は4割を超え、製造業に絞れば「3カ月未満」との回答も22.8%に上る。影響が表れるまでの時間は、私たちが想像するよりもずっと短い。
時間の猶予がこれほどまでに失われていることこそが、現在の供給網が抱える真の弱さといえるのではないか。