ホルムズ海峡再び緊張、原油90ドル台――物流収支を揺るがす構造【短期連載】1リットルの重み(2)

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ホルムズ海峡の緊張再燃で原油が再び1バレル90ドル台へ上昇するなか、日本の物流は輸送費1.4億円規模でも利益146万円という薄利構造にある。転嫁率34.7%で最下位、燃料高と倒産321件が示す限界に直面している。

ホルムズ海峡緊張再燃

物流トラック(画像:写真AC)
物流トラック(画像:写真AC)

「物流は経済の血流である」という言葉は、これまでになく重みをもって受け止められている。2026年のいま、直面しているのは人手不足にとどまらない。より避けにくく、企業ごとの努力では対応しきれない燃料費の上昇、すなわち軽油価格の高騰である。給油機に表示される数字は、運送会社の収支の問題にとどまらない。荷主企業の供給網に影響を及ぼし、やがては消費者が手にする牛乳一パックの価格にも広がっていく。トラックのタンクに入る燃料の一滴一滴が、日本の産業の力を押し下げている現実がある。この状況にどこまで目が向けられているだろうか。本短期連載「1リットルの重み」では、この燃料価格の上昇という課題をさまざまな視点から捉え直す。

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「ホルムズ海峡、再び封鎖の危機へ――」。2026年4月19日、ニューヨーク市場で原油先物相場(WTI)は前週末比7%超上昇し、再び1バレル=90ドル台に乗せた。

 一時はイラン側が「全面開放」の意向を示し、供給の滞りへの不安はいったん和らいでいた。しかし米中央軍によるイラン船籍の拘束や、革命防衛隊による警告などが重なり、状況は再び不安定さを増している。海上輸送の要所で続く緊張は、日本の物流網に大きな影響を及ぼす可能性がある。

 そもそも、今春の中東情勢の緊張を背景とした原油価格の上昇は、日本経済にも影響を及ぼし始めている。米国がイスラエルとともにイランへの大規模攻撃を行った2月28日以降、WTIは上昇を続け、4月2日には110ドルの高値をつけた。

 今回のホルムズ海峡を巡る再びの買いの加速は、価格の動きだけにとどまらない。日本の物流網が国際情勢に強く影響を受ける状態にあることを、あらためて示している。とりわけ深刻なのがトラック輸送である。

収益ほぼ均衡の輸送業界

日本のトラック輸送産業現状と課題2025(画像:全日本トラック協会)
日本のトラック輸送産業現状と課題2025(画像:全日本トラック協会)

 ここで、全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業現状と課題2025」にある一般貨物運送事業の損益明細(2023年度・全体平均)を確認する。

 営業収益は2億6400万7000円、営業費用は2億6254万1000円である。

 費用の内訳を見ると、人件費が9950万4000円で37.7%を占める。次いで、燃料油脂費が3927万円で14.9%、修繕費が1545万9000円で5.9%、減価償却費が1439万6000円で5.5%、保険料やその他の費用が9391万2000円で36.0%となっている。

 営業費用のなかで最も大きいのは人件費であり、燃料油脂費は中位の水準にとどまる。ただし営業収支率は100.5%とわずかに上回る程度で、営業利益は146万6000円にすぎない。

 また、費用項目のなかでも燃料油脂費は変動が大きく、経営への影響を受けやすい。2023年度の軽油平均価格は174.6円であったが、これが176円を超える水準になるだけで、この平均値を前提とした試算では営業利益が赤字に転じる。わずかな費用増がそのまま損失につながる状態にある。

 このことは、輸送の現場が価格の安定を前提に、ぎりぎりの水準で成り立っていることを示している。裏を返せば、外部環境の変化によって収支が大きく崩れやすい構造にあるということだ。

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