ホルムズ海峡再び緊張、原油90ドル台――物流収支を揺るがす構造【短期連載】1リットルの重み(2)

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ホルムズ海峡の緊張再燃で原油が再び1バレル90ドル台へ上昇するなか、日本の物流は輸送費1.4億円規模でも利益146万円という薄利構造にある。転嫁率34.7%で最下位、燃料高と倒産321件が示す限界に直面している。

転嫁遅れが生む収益圧迫

価格交渉月間(2025年9月)フォローアップ調査結果(画像:中小企業庁)
価格交渉月間(2025年9月)フォローアップ調査結果(画像:中小企業庁)

 本来であれば、燃料価格の変動による負担は燃料サーチャージといった仕組みで吸収されるはずである。しかし、その仕組みは十分に広がっていないのが現状である。加えて、価格への転嫁の遅れも深刻である。中小企業庁「価格交渉月間(2025年9月)フォローアップ調査結果」によれば、トラック事業者のコスト増に対する転嫁率は34.7%で、全業種中30位、最下位である。

 内訳を見ると、原材料費は31.3%で全業種平均の55.0%を下回る。エネルギー費は30.4%で全業種平均48.9%を大きく下回る。労務費も31.0%で全業種平均50.0%に届いていない。トラック運送業では、コスト増の多くが価格に反映されず、全業種のなかでも最も低い水準にとどまっている。エネルギー費や人件費についても、およそ3割しか転嫁できていない。

 この背景は、交渉力の問題というよりも、荷主との関係に左右される取引構造にある。こうした状況を受け、政府は物流二法の改正を進めている。物流総合効率化法と貨物自動車運送事業法の見直しである。このうち貨物自動車運送事業法の改正では、「適正原価を下回る運賃および料金の制限」が盛り込まれた。告示された適正原価を守ることが明確に義務付けられ、これを満たさない荷主に対しては、是正が必要な行為として指導を行うとしている。

 また、「委託次数の制限」では、多重の下請け構造を減らすため、再委託は二回以内に抑えるよう努力義務が定められた。ただし、違反しても罰則はなく、是正の指導や努力義務にとどまっており、実際に効く仕組みになっているかには疑問が残る。さらに足元では、補助金による負担軽減の措置も取られているが、これは一時的な対応に過ぎない。

 問題の本質は、燃料費の変動による負担を個々のトラック事業者にそのまま負わせている構造にある。いま求められているのは、取引先との価格交渉に頼る場当たり的な対応ではない。燃料費の変動を社会全体でどう分け合うのかという、国としての対応である。

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