英国を飲み込む「赤い旋風」――老舗自動車メーカーを震え上がらせる「中国勢」の物量作戦、EV価格逆転とトップ10の半数支配
英国でEV価格がガソリン車を下回った。平均価格差は785ポンド(約17万円)。背景にはZEV規制と平均11.7%の異例値引きがあり、中国勢の供給攻勢と在庫13%増が市場構造を揺さぶっている。
変化する自動車市場の秩序

英国で起きたEV価格の逆転劇は、環境保護への熱意が生んだものではない。法規制という壁と、市場に食い込もうとする参入者の思惑がぶつかり合った末の産物といえる。
中国メーカーは、西側諸国が自ら作り上げた「脱炭素」というルールを、自慢の供給能力で巧みに利用している。メーカー各社は制裁金を逃れるために異例の割引を断行し、消費者は最も手近な移動手段として、ガソリン車より安いEVを選ぶ。こうした個々の合理的な振る舞いが積み重なった結果、欧州の自動車産業が築いてきた収益構造は足元から崩れ始めている。それは中国勢による市場制圧を無意識に受け入れる構図を形作ってしまった。
前述のとおり新車市場全体でMGが総合2位に食い込んでいる現実は重い。こうした秩序の変化は、すでに戻ることのできない段階に入っている。在庫の供給量は増え続け、選択肢の半分以上を中国資本のモデルが占める。この事態を海の向こうの特殊な事例として眺め続けるのは、あまりに危うい。日本がこの変化を直視せず、手をこまねいている間に被る損失は、将来的に計り知れないものになるだろう。