英国を飲み込む「赤い旋風」――老舗自動車メーカーを震え上がらせる「中国勢」の物量作戦、EV価格逆転とトップ10の半数支配
中国メーカーの台頭

モデル別の需要ランキングを眺めると、驚くべき光景が広がっている。Jaecoo 7が3.1%のシェアで総合2位に食い込み、MG S9が4位、Omoda 5が8位。前述のとおりトップ10のうち、実に半数以上が中国資本のブランドで占められる事態となった。
伝統ある既存メーカーが、古い生産設備や巨大な販売網の維持という重荷に苦しむ一方で、彼らは違う。部品の調達から組み立てまでを効率よくつなげた供給体制を武器に、圧倒的な数の車両を市場へ送り込んでいる。Auto Trader上の広告掲載台数が前年より13%も増えているという事実は、その潤沢な在庫が市場を覆い尽くそうとしている証拠だろう。
サイトへの訪問数が21%伸び、消費者の目が新車に向く絶好の機会に、彼らは検索画面を自社製品で埋め尽くす。そうすることで、これまでの定番ブランドを消費者の選択肢から追いやる状況を巧みに作り出しているのだ。これは安売りではない。供給能力の差を見せつけることで、市場を物理的に奪い取る実力行使に近い。
インフレや燃料代の負担が重くのしかかるなか、彼らが示す「手の届きやすい価格」は、生活を守るための合理的な選択として人々に受け入れられた。ブランド別の需要を見ても、MGが8.7%を記録し、ランドローバーの8.2%やフォルクスワーゲンの8.0%を上回って総合2位に躍り出た。かつての勢力図が、新興勢力の手によって塗り替えられている現実は、もはや否定しようがない。
中古車市場との関係や、思うように進まない充電インフラの整備。こうした足元の制約が、新車の価格設定に大きな影を落としている。Auto Traderのベックス・ケネット氏が指摘するように、過去の需要増が長続きしなかった苦い経験から、メーカー各社は今の在庫をいち早く現金化しようと必死だ。現に新車の供給量は前年より13%も増えており、放っておけば供給過剰に陥るリスクと常に隣り合わせの状態にある。
そこへ、地政学的な不安が追い打ちをかけた。イラン情勢などをきっかけにエネルギー供給への懸念が強まり、燃料費の高騰を恐れる人々の動きがにわかに活発化している。同サイトへの訪問数が20%も伸びているのは、その表れだろう。
各メーカーはこの状況を、在庫を吐き出す好機と捉えたようだ。将来的なブランド価値を削ってでも、前述のとおり11.7%という異例の割引率を提示し、目の前の車両を強引に売りさばいている。供給の積み上がりと、ZEV法案を守らなければならないという二重の重圧。これらが重なった結果、価格を維持する力が失われ、ガソリン車より安いという逆転現象が起きた。地政学的なリスクという本来は後ろ向きな要素が、EVの安さを際立たせ、在庫放出を正当化する材料として機能している。