英国を飲み込む「赤い旋風」――老舗自動車メーカーを震え上がらせる「中国勢」の物量作戦、EV価格逆転とトップ10の半数支配
英国でEV価格がガソリン車を下回った。平均価格差は785ポンド(約17万円)。背景にはZEV規制と平均11.7%の異例値引きがあり、中国勢の供給攻勢と在庫13%増が市場構造を揺さぶっている。
制度的強制力が生む値引き

英国では現在、ZEV(ゼロエミッション車)法案が自動車メーカーに重い負担をかけている。販売台数の一定割合をEVにすることを義務付けるこの規制は、守れなければ多額の罰金を科すという厳しいものだ。メーカーにとって、EVを売ることはもはや利益を追うための手段ではない。巨額の制裁金を回避するための、いわば防衛的な行動へと姿を変えている。
数字を追うとその切迫感が伝わってくる。3月に過去最高となる12.8%を記録したEVの平均割引率は、4月に入っても11.7%という異例の高水準を保ったままだ。前述のとおり車全体の平均割引率が10.0%であることを考えれば、EVにはさらに1.7ポイント分もの「上乗せされた値下げ」が断行されていることになる。
この1.7ポイントの差を、販促キャンペーンの費用と見るのは早計だろう。実態は、法規制をクリアするために支払われるコンプライアンス上のコストが、価格の引き下げという形で現れたものといえる。
各社が罰金を免れようと個別に動いた結果、ついにEVの価格がガソリン車を下回るという事態を招いた。本来の生産コストを考えれば、こうした価格設定は説明がつかない。利益を削ってでも一台を売り切ることが、罰金を払うよりも傷が浅いという経営判断。それが、市場が本来持っているはずの価格決定機能を、なかば麻痺させているのが現状だ。