日産、欧州で従業員1割削減――サンダーランド工場「ライン統合」が映し出す、EU規制と低稼働率の厳しい現実
日産は欧州従業員の1割削減と英工場のライン統合を決定。EU規制や離脱後のコスト増で稼働率は50%に低迷しており、構造改革を断行する。スペインの拠点閉鎖や中国メーカーとの工場共用も検討。産業空洞化が進む英国で、拠点の再設計と規制への適応を通じ、変化の激しい市場での生き残りを目指す。
英拠点の規模縮小と人員削減の断行

日産自動車の英国サンダーランド工場がいま、岐路に立たされている。年間60万台の生産能力を誇り、直接雇用だけで6000人、関連産業を含めれば約3万人もの生活を支えるこの巨大拠点は、長らく英国最大の自動車生産の要として君臨してきた。しかし、欧州連合(EU)市場への輸出拠点として盤石だったはずの足元が、現地の政策変更によって揺らぎ始めている。
とりわけ懸念されるのが「原産地規則」の壁だ。これを満たせなければ、輸出時に重い関税が課される。長年積み上げてきた効率的な生産体制も、制度ひとつで採算が合わなくなる恐れがあるのだ。
さらに、電気自動車(EV)への急速なシフトが追い打ちをかける。日産は現地でのEV生産や電池投資を加速させているものの、EUが求める規制強化のスピードは凄まじい。収益力が低下するなかで、経営陣は極めて難しいかじ取りを迫られてきたが、ついに2026年5月、欧州全域で従業員の1割にあたる900人の削減という苦渋の決断を下した。
かつては圧倒的な武器だった年間60万台という規模も、不透明な環境下では、それがそのまま固定費という重荷に転じている。日産はサンダーランド工場にある2つの生産ラインを1つに統合する方針を固めており、生産体制のスリム化を急いでいる。この成否は日産一社の問題にとどまらない。トヨタをはじめ、英国に根を張る日本メーカー全体の未来を占う判断材料となるだろう。