日産、欧州で従業員1割削減――サンダーランド工場「ライン統合」が映し出す、EU規制と低稼働率の厳しい現実

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日産は欧州従業員の1割削減と英工場のライン統合を決定。EU規制や離脱後のコスト増で稼働率は50%に低迷しており、構造改革を断行する。スペインの拠点閉鎖や中国メーカーとの工場共用も検討。産業空洞化が進む英国で、拠点の再設計と規制への適応を通じ、変化の激しい市場での生き残りを目指す。

産業空洞化の加速と生存への適応戦略

英国自動車メーカーの生存戦略。
英国自動車メーカーの生存戦略。

 19世紀に産業革命を先導した英国は、いま、EU離脱という歴史的な転換点を経て「産業の空洞化」という重い課題に直面している。国内の分断は癒えぬまま、かつての工業大国の面影は薄れつつある。人口約7000万人を抱える英国は、依然としてドイツに次ぐ欧州第2の市場規模を誇るが、5億人規模を擁する巨大なEU市場との差はあまりに大きい。

 その荒波のなかで、日産のサンダーランド工場はまさに存続をかけた瀬戸際に立たされている。2025年に発表された世界的な人員削減計画では対象を免れた同工場だったが、1年後の現在、ライン統合という踏み込んだ策を講じざるを得なくなった。さらに中国の奇瑞汽車(チェリー)との工場共同利用に関する協議が報じられるなど、自社専用の拠点としての維持すら困難な局面を迎えつつある。

 サンダーランドでの苦闘は、日産が各地の政治状況を自らの事業構造に取り込み、地域ごとの規制を収益へと結びつける「適応力」を磨く過程でもある。ここで得た経験を北米や中国といった他の主要市場に還元し、投資の規模や単位を柔軟に見極めることができれば、変化の激しい時代に耐えうる体質を築けるはずだ。

 国や地域の制度変更を負担としてだけ受け止めるのではなく、自社の強みを際立たせる材料へと昇華させる。厳しい局面は今後も続くだろう。だが、この絶え間ない揺れを自らの力に変えられるかどうか。それこそが、生き残りの絶対条件となるだろう。

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