「廃業も視野に入れています」“令和のオイルショック”直撃――食料インフレの震源はどこまで拡大するのか?
燃料高騰が突きつける供給の限界

現在進行している状況は、一時的なコスト上昇にとどまるものではない。中東情勢の緊迫にともなう「令和のオイルショック」は、日本の一次産業が戦後を通じて築いてきた、安価な化石燃料と長距離トラック輸送を前提とした構造を揺るがしている。これまでの流通は、
・高速道路網の整備
・安価な軽油
に支えられ、距離の負担を費用から切り離すことで成り立ってきた。しかし原油価格の上昇により、移動距離がそのまま利益を削る要因として再び前面に出ている。
施設園芸の暖房や漁船の重油、農機の軽油に加え、プラスチックの梱包材や化学肥料まで、生産の広い範囲が石油の供給状況に左右されている。1970年代以降、日本の輸送はトラック中心に偏ってきたが、燃料高騰はそのまま運賃の上昇につながる。今の輸送には、この急なコスト増を受け止める余地が乏しい。市場の委託販売や、生産者が輸送費を負担する慣行も障害となり、外部環境の変化を販売価格へ速やかに反映させる流れが弱まっている。
本質的な問題は、生産から消費までの流れのなかで、コスト上昇の負担が
「最も弱い立場の生産者に集中している」
点にある。これまでの報道は消費者の家計を守る議論に偏りがちで、供給側が事業を続けられるのかという視点が薄い。生産者は長年、輸送費や資材費の上昇分を経営の工夫として自ら抱え込んできたが、その負担はすでに限界に近いのだ。
資材費や人件費が上がっても、農産物の価格は主に店頭での需給関係で決まるため、生産側のコスト上昇が反映されにくい状態が続いている。消費者は店頭価格しか見る機会がなく、その裏にある輸送費や資材費の構造を知る機会が限られている。そのため値上げへの理解も得にくい。
流通や小売は販売量の維持を優先し、生産側は経営を守るための値上げを求めるが、現在の市場では両者の調整が十分に働いていない。本来は社会全体で負担すべき石油由来の梱包材や肥料のコスト増が、生産者の収益を直接圧迫する形で処理されているのだ。