高速バス「2人乗務」はなぜ機能しなかったのか?――乗客17人負傷事故に潜む運用実態、現場の合理性が生んだ「管理の死角」

キーワード :
,
交代要員が同乗しながら居眠り運転に至り、乗客20人中3人が重傷となった高速バス事故。形式上は整っていた安全体制は、なぜ機能しなかったのか。現場の判断と組織のあり方、そのずれが招いた構造的な歪みに迫る。

交代要員が機能しなかった背景

大型乗合バスの追突事故の当該車両(画像:交通事故総合分析センター)
大型乗合バスの追突事故の当該車両(画像:交通事故総合分析センター)

 2026年3月27日、国土交通省の外部委託組織である事業用自動車事故調査委員会(吉田裕委員長)は、2023年4月17日に三重県三重郡菰野町で起きた高速バス事故の調査報告書を公表した。

 深夜0時12分ごろ、新名神高速道路上り線を走行中の大型乗合バスが前方の大型トラクターに追突し、その後、走行車線上に止まったバスへ後続の大型トラックが衝突した。事故は多重化し、乗客20人のうち3人が重傷、14人が軽傷を負う結果となった。

 報告書は、

・運行計画に沿わない長時間運転
・事故後の対応の遅れ

を理由に挙げる。ただ、焦点はそこにとどまらない。交代要員が同乗していたにもかかわらず、なぜ居眠り運転に至ったのか――この点を外すと、全体像は見えてこない。制度上は安全を守る体制が整っていた。それでも事故は起きた。このずれは、個人の規則違反だけで片づけられるものではない。

 トラックと旅客バスが行き交う高速道路で、覚醒が落ちやすい深夜の時間帯に運行は続く。本来、「ふたり乗務」は負担を分け合うための前提だが、現場では別の使われ方に傾いていた。乗客の命を守るためにかける費用が、現場ごとの都合とぶつかり、機能が鈍っていく。各自がその場で最善と考えた選択が重なり合い、結果として全体の綻びにつながった。ここで起きていたのは、積み重なりの末に表れた帰結といっていいだろう。

全てのコメントを見る