生活保護で「自動車」を認めるべきか?――「車を捨てれば仕事がない」1967人の調査で見えた、制度と現実の断絶 ネットの声とともに読み解く

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生活保護164万世帯、申請25万件超――拡大する困窮の中で、車は「資産」か「就労インフラ」か。保有認可0.6%という制度の壁が移動と就労を分断し、中古車市場や地域経済にも波及する構造を検証する。

絡み合う利害

生活保護イメージ(画像:写真AC)
生活保護イメージ(画像:写真AC)

 この問題を「弱者救済」だけで語るのは難しい。関わる人たちの立場によって、利害も負うリスクも違う。

 行政は、資産の保有を制限することで公平性を保とうとする。不正受給を防ぐ狙いもあるだろう。だが、移動手段がないために社会復帰が遅れれば、扶助費の支給は長引く。

 2025年6月26日、名古屋高裁は、障がいのある受給者に車の保有を認めなかった三重県鈴鹿市の処分を不当とした。この判決を受け、日本弁護士連合会は同年9月18日、自動車の保有要件について緩和を求める会長声明を発表している。現行制度は極めて制限的であり、社会事情にそぐわないとの指摘だ。

 司法の判断を踏まえ、行政は子育て世帯への対応も含め、費用と運用の折り合いを探る必要に迫られている。短期の支出を抑えるために車を手放させれば、将来の就労機会を狭める。税を納める側を増やす道を自ら閉ざしているようにも見える。

 受給者にとって、車が認められれば働ける範囲は広がる。育児の負担も減る。ただし、中古の軽自動車でも維持には年間20万から30万円かかる。保護費の範囲外だから、食費などを削って賄うしかない。前述のアーラリンクの調査では、受給者の36.5%が保護費を不十分と感じており、食事を1日1食にする、暖房を極端に我慢する、薬を間引いて飲むといった、身体を削る選択を強いられている実態が明らかになった。

 しかも維持費の一部は、自動車税やガソリン税、自賠責保険料として国に戻る。給付された資金が、車を通じて再び公的領域へ流れる。この循環を無駄と見る人もいる。ネット上には

「自動車がないと再就職の幅が限られ、仕事を見つけにくい」

という声がある一方で、「追加の支援はなく、生活費から維持費を削ることになる」という指摘も見られる。実際に車を保有しながら生活保護を受けていた人からは「お金を貯めて車を購入しました。働くことが楽になって生活保護を脱却できたのは、車があったおかげです」という報告もある。

 メーカーや投資家から見れば、約200万人の受給者は無視できない市場だ。安価なリースで移動手段を確保できれば、地域の消費や就労が広がる。事業機会も生まれる。だが同時に、支払い能力への心配は根強い。ネット上には

「事故時に賠償ができないのではないか」

という不安の声が出ている。任意保険への加入状況も含め、事故が起きたときの負担をどう扱うか。過去に賠償能力の不足が問題になった裁判が記憶されているだけに、要件の緩和に慎重な見方が消えない。

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