生活保護で「自動車」を認めるべきか?――「車を捨てれば仕事がない」1967人の調査で見えた、制度と現実の断絶 ネットの声とともに読み解く

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生活保護164万世帯、申請25万件超――拡大する困窮の中で、車は「資産」か「就労インフラ」か。保有認可0.6%という制度の壁が移動と就労を分断し、中古車市場や地域経済にも波及する構造を検証する。

数字が映す現実

生活保護イメージ(画像:写真AC)
生活保護イメージ(画像:写真AC)

 一般世帯の乗用車保有率は77.6%である(日本自動車工業会「乗用車市場動向調査」2023年度)。一方、自治体が生活保護世帯に車の保有を認めているのは

「0.6%」

にすぎない。この差は、制度と暮らしの間にある深い溝を物語る。日本弁護士連合会が2023年に全国自治体を対象に行った調査で明らかになったこの数字は、車の保有が極めて制限的に運用されている実態を示している。

 低い保有率は、市場にも影を落とす。中古車市場の下層、本来なら動くはずの低価格帯の車が、需要の細りとともに停滞している。買い替えの循環を支える層が、制度によって押さえ込まれている。

 ひとり親家庭サポート団体全国協議会の調査は、2025年9月5日から2026年2月末日まで実施された。

「車を手放したら仕事に行けなくなる」
「子どもの送迎や通院ができない」
「生活保護より車を選ばざるを得なかった」

寄せられた声は、制度のはざまで生活する人々の実態を映し出している。

 地方では公共交通が減り、車なしでは日常が成り立たない。ネット上には

「最寄りのバス停やスーパーまで徒歩で1時間以上かかることも珍しくない」

という投稿が見られる。維持費が将来の収入を上回るかもしれないが、それでも手放せない人がいる。

 前述の厚生労働省のデータでは、高齢者世帯が54.7%を占め、母子世帯は3.6%だった。新規の申請は前年比0.18%増。困窮は広がっているが、その背景は切実だ。受給者525人を対象とした実態調査(アーラリンク調べ・2025年12月)では、受給理由の79%が病気やケガ、障害、失業といった自分の力ではどうにもならない事由であった。

「働き続ける体力が限界だった」
「うつ病で離職した」

という声は、怠けているという偏見とは別の現実を示している。減便が進む地域では、移動手段の有無が生活そのものを決める。

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