「まぶしくて迷惑です」 新車の9割に搭載されながら、なぜハイビームは公道の“嫌われ者”であり続けるのか?

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新車の9割に搭載されたオートハイビームも、夜間使用率はわずか14%。過去10年の歩行者死亡事故の95%はロービーム走行で発生し、普及と活用の乖離が安全格差と制度ジレンマを生んでいる。

法規と安全の矛盾

ハイビームの適正使用を呼びかける埼玉県警のページの一部(画像:埼玉県警察)
ハイビームの適正使用を呼びかける埼玉県警のページの一部(画像:埼玉県警察)

 オートハイビームが敬遠される背景には、今の決まりが抱える大きな矛盾がある。警察庁のウェブサイトでは、夜間のハイビームを強く勧めている。遠くの歩行者に早く気づき、事故を避けられるからだ。法律の基準で見ても、ハイビームは前方100m、ロービームは40m先まで見える必要があるとされ、その視認距離には2倍以上の開きがある。

 埼玉県警が出している数字はさらに切実だ。時速50kmで走っているとき、暗い色の服を着た歩行者に気づいてからぶつかるまでは、わずか2秒ほどしかない。50kmで急ブレーキをかけて止まれる距離が32mなのに対し、ロービームで見える範囲は26mにとどまる。つまり、気づいた時にはもう間に合わないのだ。だからこそ県警も、下向きのライトだけでは防げない事故があると警鐘を鳴らしている。

 一方で、道路交通法の第52条第2項は、対向車や前の車がいるときには明かりを落とすよう求めている。これを守らなければ、反則金6000円と点数1点が引かれる

「減光等義務違反」

に問われる。さらに2020年には妨害運転罪も加わった。わざとハイビームを浴びせ続けたとみなされれば、重い罰を受ける恐れさえある。

 結局、今の仕組みは「安全のために使え」という一方で、「対向車がいる状態でのハイビームは違反」という

「真逆の重圧」

を同時にかけている。万が一の事故を恐れる気持ちよりも、目の前の警察による取り締まりや、周りからの怒りを避けたいと思うのは、生活者としてごく自然な心理だろう。自分を守ろうとすればするほど、リスクの少ないロービームを選び続けるしかない。この理不尽な板挟みが、優れた機能を死蔵させている大きな壁になっているのだ。

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