「まぶしくて迷惑です」 新車の9割に搭載されながら、なぜハイビームは公道の“嫌われ者”であり続けるのか?

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新車の9割に搭載されたオートハイビームも、夜間使用率はわずか14%。過去10年の歩行者死亡事故の95%はロービーム走行で発生し、普及と活用の乖離が安全格差と制度ジレンマを生んでいる。

操作の複雑さと誤解

夜間歩行者死亡事故の約95%がロービーム走行時に発生した現場の前照灯状況(画像:交通事故総合分析センター)
夜間歩行者死亡事故の約95%がロービーム走行時に発生した現場の前照灯状況(画像:交通事故総合分析センター)

 これほど装備が進んでいるにもかかわらず、なぜオートハイビームへの風当たりは強いのか。そこには複数の事情が絡み合っている。

 多くの人が突き当たっているのは、そもそも使い方がわかりにくいという壁だ。ITARDAの資料でも、この機能は決して「完全自動ではない」とはっきり書かれている。オンとオフを自分で切り替える手間が必要なうえ、メーカーや年式によってそのやり方はバラバラだ。なかにはオートライトの場所に合わせるだけで勝手に動き出す車もあり、知らないうちにハイビームが点灯しているケースも珍しくない。各社が足並みを揃えず、使い勝手を置き去りにして普及のスピードばかりを追い求めたツケが、今になって利用者への重い負担となって跳ね返っている。

 仕組みの限界も無視できない。カメラで相手の明かりを捉えて判断するが、雨や霧といった天候、あるいは看板や鏡の反射に惑わされることがある。そうなると、切り替えが遅れたり、不自然な動きをしたりする。特にITARDAが指摘するように、自ら光を発しない歩行者や自転車に対しては反応が鈍いという弱点がある。費用を抑えたあり合わせの組み合わせで済ませようとしたことが、結果として周りの車をまぶしがらせる不快感に繋がっている格好だ。

 さらに、ネット上での感情的なやり取りが、この機能のイメージを一段と悪くしている。一瞬の切り替え遅れが対向車をいらだたせ、実際にパッシングなどのいさかいに発展する例も報じられている。こうしたトラブルの体験談が瞬く間に広がることで、本来は身を守るためのものが、すっかり

「オートハイビーム = 迷惑」

として扱われるようになってしまった。2020年の法改正であおり運転への罰則が厳しくなったが、機械側の不完全さがドライバー同士の対立を生み出す火種となっている事実は変わっていない。

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