「エンジン音では何も語れません」 EV普及のカギは馬力でもトルクでもない? 年率20%超の成長が示す「次なる付加価値」とは
EVの性能はもはや馬力やトルクでは測れない。膨大な半導体とバッテリーから発生する熱を制御する冷却・加熱システムの巧拙が航続距離や寿命を左右し、市場規模は年20.8%成長と予測される新たな産業戦線となっている。
熱を制する者が勝つ時代

熱を制する能力が車両の序列を決める時代が到来した。
これまで自動車の性能を測る尺度だった馬力やトルクは、限られたエネルギーを最適に循環させる熱マネジメントの効率性に取って代わられた。年率20.8%という市場成長の背景にあるのは、部品の需要拡大にとどまらず、車両の付加価値そのものが物理的な構成から統合制御へと移っている事実だろう。
メガサプライヤーによる制御のブラックボックス化が進むなか、完成車メーカーが自社で全工程を完結させる難易度は上がり、サプライチェーンの力学は根本から変わっている。液浸冷却の採用は、自動車を高密度な移動式計算機へと変貌させ、エネルギー企業をも巻き込んだ新たな利益争いを引き起こす。
日本企業がこの競争を勝ち抜くためには、長年磨き上げた物理的な調律能力を、ソフトウェアによる動的な最適化へと昇華させる必要がある。熱の流れを完全に掌握できない勢力に、次世代の覇権を握る余地は残されていない。