「エンジン音では何も語れません」 EV普及のカギは馬力でもトルクでもない? 年率20%超の成長が示す「次なる付加価値」とは

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EVの性能はもはや馬力やトルクでは測れない。膨大な半導体とバッテリーから発生する熱を制御する冷却・加熱システムの巧拙が航続距離や寿命を左右し、市場規模は年20.8%成長と予測される新たな産業戦線となっている。

次世代の「液浸冷却」

液浸冷却バッテリー(画像:XING Mobility)
液浸冷却バッテリー(画像:XING Mobility)

 EVの冷却システムは現状、水冷式が主流だが、将来的な高性能化を見据えて

「液浸冷却」

の開発が加速している。液浸冷却は、PCやAI用サーバーの熱対策として実用化されている技術だ。半導体から発生した熱を空冷や水冷で間接的に逃がすのではなく、基板やセル全体を特殊な液体に浸すことで直接熱を吸収する。大規模なAIデータセンターで発生する膨大な熱を処理するために導入されており、水冷式を超える冷却効率を誇る。

 ただし使用されるフッ素系の特殊な冷却液は、水と比べて極めて高価であり、コストの上昇が普及への壁になっている。

 このシステムをEVへ応用する動きが活発化しており、MAHLEやValeoといった欧州の有力企業に加え、台湾のXING Mobilityが実用化を急いでいる。主な目的は駆動用バッテリーから生じる熱の処理だ。

 従来の水冷方式では個々のバッテリーセルを直接冷却することに限界があったが、液浸冷却はこの物理的な制約を解消する。これにより、バッテリーの高出力化や超急速充電システムの導入が可能となり、航続距離の伸長と利便性の向上を同時に達成できる。

 産業の視点で見れば、液浸冷却への移行は自動車のサーバー化を加速させる事態といえる。また、ENEOSが冷却液の開発に参入している事実は、化石燃料の販売が先細るエネルギー企業にとって、車両内部を循環する流体市場を占めようとする生存戦略の一環と見なせる。

 一方で、フッ素系溶媒に対する法規制の強化といった地政学的な懸念が、普及を左右する材料として浮上している。液浸冷却は開発段階にあるものの、XING Mobilityが英国ケータハムの試作車に採用して注目を集めた。冷却液の価格や重量の課題は残るが、熱の制御が車両の優劣を決める状況下で、この技術の進展が業界の勢力図を塗り替える可能性を秘めている。

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