「最近の電車はどれも同じ」は本当か? ――画一化を嘆くファンが気づかない、メーカー5社の「先端戦略」とは

キーワード :
通勤電車の姿は似てきたが、その裏では1990年代以降の大量更新と人手不足を背景に、各社が異なるプラットフォーム戦略を磨いてきた。メーカー選択をたどると、地域鉄道の事情と経営判断が浮かび上がる。

中部と関西の違い

川崎車両のefACEを採用するJR西日本225系(画像:写真AC)
川崎車両のefACEを採用するJR西日本225系(画像:写真AC)

 中部圏に目を向けると、鉄道の風景は首都圏や関西とは少し様子が違う。JR東海、名鉄、名古屋市営交通がそれぞれの持ち場を固め、地域のなかで完結した輸送を担ってきた。路線同士が広くつながる相互直通は多くない。編成の組み方や車内設備の条件も、長い時間をかけてほぼ固定されてきた経緯がある。結果として、いったん導入した車両は大きな仕様変更を受けることなく、同じ前提のまま使い続けられていく。

 現場では、後から手を入れて細かく合わせ込む余地がそもそも少ない。自社線内で完結し、初期状態を保ったまま長期間走らせる。そうした使い方が前提になると、更新の場面で問われるポイントもおのずと変わってくる。導入後の工夫よりも、つくる段階でどれだけ安定して品質をそろえられるか。話題は自然とそこに集まる。

 日本車輌製造のN-QUALIS、いわゆる日車式ブロック工法は、その文脈で理解しやすい。側構体をいくつかのブロックに分けて製作し、工程を細かく区切ったうえで最後に全体を組み上げる。巨大な設備にすべてを依存する形ではなく、工程の置き方や作業の順番にある程度のゆとりが残る。工場の規模や持っている設備が違っても、同じ仕様の車両を計画どおり形にできる。中部圏のように、同一条件で長く使うことを前提とした更新のやり方とは相性がよい、そんな印象を受ける。

 一方で関西圏に入ると空気が変わる。「私鉄王国」といわれるとおり、事業者ごとの個性がはっきりしている地域だ。ただ、車両メーカーの側から眺めると、阪急を除けば、実際に主力を担ってきたのは川崎車両と近畿車輛の二社にほぼ集約される。競合区間が多く、利用者が路線や会社を選べる環境に置かれてきたため、車両には画一性よりも各社の色が求められてきた。ブランドの打ち出し方や運行の考え方、サービスの水準まで、違いが目に見える形で反映される。

 川崎車両は「efACE」という自社ブランドを掲げつつ、ステンレスかアルミかといった素材の選択を含め、細かな要望に応じられる余地を広く取っている。近畿車輛は特定のブランドを前面に出さない代わりに、調整力で応えてきた会社だ。関東でも、東武鉄道や東京メトロ日比谷線、都営三田線など、継続的な取引が強いとはいい切れない相手に対しても一括受注をこなしてきた実績があり、案件ごとの条件に合わせて形を変える対応力がうかがえる。

 両社に共通するのは、あらかじめ決めた仕様を押し通す姿勢ではない。事業者ごとの要求を無理なく落とし込み、外観や居住性、走り味に違いが出ても製造そのものは滞らせない。その積み重ねが、関西私鉄からの長い信頼につながってきたのだろう。地域ごとに異なる運用の前提と、それに応じたつくり方の差。車両メーカーの役割は、思っている以上に土地の事情と結びついている。

全てのコメントを見る