特定原付「事故67%増」の衝撃――「1分20円」の利用料金を飲み込む保険料、採算モデルは限界なのか?

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規制緩和で急拡大した電動キックボードだが、事故は226件から378件へ67%増。保険料と補償負担が採算を圧迫し、利便性モデルの持続性がいま試されている。

利便性と経済合理性の二項対立

電動キックボードによる事故処理のイメージ(画像:写真AC)
電動キックボードによる事故処理のイメージ(画像:写真AC)

 事業者側は、電動キックボードが都市の移動効率を高め、公共交通を補う存在だと主張している。特にLUUPなどのシェアリング事業者は、ラストワンマイルの解消や自動車依存の低減といった社会的意義を強調し、重いコスト負担は新しい挑戦を阻みかねないという立場を取っている。

 実際、事故のリスクを前提に対人・対物無制限の補償を整え、安全対策やシステム投資を進めるために多額の資金調達を行ってきた経緯もある。利用者の交通ルールの理解が追いつくには一定の時間が必要で、短期的な事故率の変動だけで事業の是非を判断すべきではない、という論理だ。ただ、これまでの利便性を追い求める姿勢は、社会的な安定との均衡を保つ段階へと変化を迫られている。

 これに対し、損害保険業界や慎重派の見方はよりシビアだ。警察庁の資料によれば、 2024年中に起きた特定原付関連事故378件のうち、レンタル車両が

「約9割」

を占め、起きた場所も約7割が東京に集中している。事故リスクは市場全体に分散しているのではなく、都市部のシェアリングという特定の形態に偏っている構図が浮かび上がる。

 さらに国会答弁では、2025年上半期の飲酒事故割合が特定原付で約17.8%に達し、自転車や一般の原動機付自転車と比べて著しく高い水準にあることが示された。こうした一部の利用者が引き起こす高いリスクを、事業全体や

「優良な利用者が保険料という形で肩代わりしている」

不公平なコスト構造の是正が求められている。

 この対立は、もはや考え方の違いにとどまらない。政府は、飲酒事故の多発を背景に、シェアリング事業者団体に対して夜間の貸し出し停止など、より実効性の高い対策を要請する段階に踏み込んでいる。利便性を優先してきた運用に具体的な制約を課す動きが現実の政策として現れ始めた以上、この乗り物を巡る議論は推進か抑制かという二項対立では済まない。

・利便性という価値
・事故にともなう損害額という数値

その衝突点で、起きるコストを誰が負担するのかが問われているのだ――。

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