特定原付「事故67%増」の衝撃――「1分20円」の利用料金を飲み込む保険料、採算モデルは限界なのか?

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規制緩和で急拡大した電動キックボードだが、事故は226件から378件へ67%増。保険料と補償負担が採算を圧迫し、利便性モデルの持続性がいま試されている。

事業者に重くのしかかる無制限補償

電動キックボード利用者のイメージ(画像:写真AC)
電動キックボード利用者のイメージ(画像:写真AC)

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 特定原付は、自賠責保険への加入が義務付けられている。これに加えて、シェアリング事業者の多くは、対人・対物ともに無制限補償をうたう任意保険を上乗せしている。被害者救済の観点から見れば、利用者が次々と入れ替わるサービス形態で、補償を事業者側で手厚く用意する仕組みは合理的といえる。

 ただ、損害保険会社から見ると、不特定多数の利用者がどんな運転技術やリスク特性を持っているかを正確につかむことは難しく、この情報の不透明さが、結果として保守的で高額な料率の見積もりを招いている。

 損害保険は自賠責のような強制加入とは違い、基本は私契約だ。引受条件や料率は、事故頻度と損害額の見通しに応じて見直される。事故が増え、死亡や後遺障害といった高額な賠償リスクが現実のものになれば、保険料の引き上げや条件の厳しさが進むのは、保険の実務では避けられない流れだ。

 問題は、こうした調整が保険の世界だけで完結せず、

「シェアリング事業の採算そのものに直結している」

点にある。リスクを引き受ける保険会社が限られるなかで、事業者は示された条件を受け入れざるを得ず、コスト管理の主導権を外部に委ねざるを得ない状況が生じている。

 これは制度論というより、経済的な合理性の問題だ。保険会社にとって損害率が見合わない状態が続けば、同じ条件で契約を続けることは難しくなる。事故データが積み上がるほど、事業者は手厚い補償を維持するための費用負担と向き合わざるを得ず、条件変更が重なれば、サービスの運営が事実上立ち行かなくなる局面も想定される。

 いわゆる“保険難民化”という事態は、こうした実務上の積み重ねの結果として捉える必要があるだろう。

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