「1億円で週末サーキット体験」 超富裕層を狙うGT3、トヨタGRの権利ビジネス戦略をご存じか
GT3市場で桁違いの富裕層需要を狙うトヨタ。車両価格1億円規模でも、耐久性・操作性・物流網を武器に欧州勢独占市場に挑み、内燃機関の高付加価値化を狙う。
敵の車で学んだトヨタ

特筆すべきは、トヨタがこの開発のために敵の車を徹底的に研究したという事実だ。トヨタ系列のプライベートチームである「ROOKIE Racing(ルーキーレーシング)」は、スーパー耐久シリーズにおいて、あえて自社製ではなく「メルセデスAMG GT3」を採用し、複数シーズンを戦ってきた。ステアリングを握ったのは、他ならぬモリゾウこと豊田章男会長たちだ(モリゾウ氏は同チームより出走する水素カローラをドライブ)。
世界で最も売れているGT3マシンであるAMGを実際に運用し、アマチュアドライバーが安心して踏める操縦性とは何か、パーツの供給体制はどうあるべきか、メンテナンスのしやすさはどうかなどを肌感覚として徹底的に叩き込んだ上で、満を持して開発・発表されたのがGR GT3なのである。
ここでトヨタが追求したのは、純粋な速さだけでなく、極限状態で人間が感じる恐怖を取り除く操作性の標準化だ。欧州勢が職人気質な調整によって秘匿してきた領域を、トヨタは製造業の論理で解明し、誰が扱っても再現性の高い挙動を実現しようとしている。壊れにくさを追求することは、チーム運営におけるキャッシュフローの予測可能性を高める。
欧州メーカーの不透明なパーツ供給体制に対し、世界一の物流網を活用した迅速な部品提供を実現すれば、それはカスタマーレーシング市場における強力な破壊力となるだろう。