「1億円で週末サーキット体験」 超富裕層を狙うGT3、トヨタGRの権利ビジネス戦略をご存じか

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GT3市場で桁違いの富裕層需要を狙うトヨタ。車両価格1億円規模でも、耐久性・操作性・物流網を武器に欧州勢独占市場に挑み、内燃機関の高付加価値化を狙う。

なぜ今「GT3」が「金のなる木」なのか?

トヨタの発表したGR GT3 。公道走行不可のレーシングマシンながら一般販売予定だ(画像:Toyota Gazoo Racing)
トヨタの発表したGR GT3 。公道走行不可のレーシングマシンながら一般販売予定だ(画像:Toyota Gazoo Racing)

 GT3(FIA-GT3)とは、国際自動車連盟(FIA)が定めた市販車ベースのレース車両規定だ。このカテゴリーがビジネスとして優れている理由は、F1のような自動車メーカーのお抱えレース(ワークス活動)ではなく、車両を顧客に売って稼ぐカスタマーレーシングという仕組みが確立されている点にある。

 GT3市場を支えているのは、プロレーサーではない。企業のオーナー経営者や投資家など、ジェントルマンドライバーと呼ばれる超富裕層のアマチュアたちだ。彼らにとって、週末にサーキットでレーシングカーを走らせることは、ゴルフに代わる究極の社交であり趣味である。ただし、そのコストは桁外れだ。車両価格は6000万円から1億円規模、さらに消耗部品やメンテナンス、エンジニアを雇うためのランニングコストもユーザーが負担することになる。

 メーカー側から見れば、これは一度車両を納入すれば、純正パーツや技術サポート料が入り続けるサブスクリプション的な収益構造となる。さらに踏み込めば、極限状態での実走データ収集という膨大な研究開発コストを、車両購入費や走行料という形で顧客に負担させるリスクヘッジの側面も併せ持つ。

 メーカーは開発費用を自社の貸借対照表から切り離しつつ、ロジスティクスやデータ解析といった代わりのきかない役務を独占的に提供することで、ひとりの顧客から得られる収益の総和を最大化させているのだ。

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