世界で稼ぐなら「10速AT」は必須? もはや無視できない「多段化」の波、カローラまで飲み込む“過剰装備”の真意とは
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内燃機関車の価値を最大化する多段ATが、8~10速へと進化。トヨタやメルセデスの最新モデルでは燃費20%向上、変速応答も高速化。環境規制と市場競争が推進力となっている。
CVTとの効率比較と市場戦略

効率的な走行を目指すトランスミッションの選択肢としては、多段ATに加えて無段変速機(CVT)も広く普及している。世界のCVT市場で日本メーカーが占める割合は約55%に達し、国内の走行環境に適した技術として確立されている。
CVTは理論上、無限のギア比を持つため、エンジンを常に最適な回転数で運転できる。信号の多い都市部では、発進と停止を繰り返す状況でも変速ショックがなく、滑らかに走れることが大きなメリットだ。
ただし、CVTには構造上の限界もある。ベルトやチェーンとプーリーの摩擦を通じて動力を伝えるため、伝達効率はおおむね80%前後にとどまる。エンジンの力をタイヤに伝える過程で損失が生じやすく、特に高速巡航ではベルト式CVTの効率低下が顕著になる。その結果、燃費性能の面では多段ATが優位に立つことが少なくない。
こうした特性の違いは、各メーカーのグローバル戦略にも反映されている。低中速域が中心の日本市場ではCVTが有効だが、欧州や北米のように平均速度が高く長距離移動が多い地域では、確実な動力伝達が可能な多段ATが支持される傾向にある。多段ATは段数を増やすことでCVTに近い滑らかさを確保しつつ、もともとの機械的伝達効率の高さを維持できる点が強みだ。
さらに、多段ATは高トルクへの耐性にも優れ、大型スポーツタイプ多目的車(SUV)やピックアップトラック、高出力スポーツモデルなど、収益の柱となる車両にも柔軟に対応できる。世界各地の多様な要求に応え、どの市場でも通用する商品力を保つには、信頼性と効率を両立させた多段ATの採用が戦略上欠かせない。
内燃機関の性能を最後まで引き出し、電動化が進む時代においても選ばれる車であり続けるための進化が、この多段化に凝縮されている。