世界で稼ぐなら「10速AT」は必須? もはや無視できない「多段化」の波、カローラまで飲み込む“過剰装備”の真意とは
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WLTC導入とEU規制への対応

ATの多段化を進める背景には、各国で強化される環境規制や燃費基準への対応という課題がある。日本では2016年10月から、実際の走行環境に近い国際基準、WLTCモードによる燃費測定が導入された。2018年10月からは、新型車のカタログ表示が義務化されている。
WLTCモードは市街地、郊外、高速道路の各走行を組み合わせたもので、高速巡航時にエンジン回転数を低く保てるかどうかが評価に直結する。これにより、国内メーカーは高速走行時の効率を重視した開発を迫られることになった。
欧州ではさらに厳しい基準が設定されている。欧州連合(EU)は2021年、域内で販売するメーカー平均の二酸化炭素(CO2)排出量を、走行1kmあたり95g以下に抑える規制を導入した。さらに2025年には2021年比で15%削減、2030年には乗用車で37.5%削減という目標が掲げられる。達成できなかった場合に課される制裁金は巨額で、メーカーにとって大きな財務リスクとなる。そのため、多段ATの採用は環境対応という側面だけでなく、企業の財務を守る防衛策としても重要性を増している。
こうした環境のなか、トヨタは2016年に新型パワートレーンを搭載する車種を、2021年までに主要市場での販売台数の60%以上に拡大する方針を示した。その後、TNGA(Toyota New Global Architecture)の共通思想のもとでエンジンや変速機の刷新を進め、2023年には搭載率を約80%まで引き上げる計画を打ち出している。
高い搭載率を実現できた理由は、TNGAによる主要コンポーネントの共通化にある。カローラやヤリス、RAV4、ハリアーといった量販車種へ広く多段ATを搭載できる体制を整えたことで、従来は高価だったシステムを量産効果でコスト抑制しつつ規制に対応する構造が可能になった。世界的なCO2規制の強化という外部環境の変化に対し、開発効率と製品競争力の両立を果たしたことが、今日の多段AT普及につながっている。