「180kmでは冬を越せない?」日産サクラ急落が示す、軽EV300kmの“防衛ライン”――先進性より確実さを選ぶマジョリティ層の決断
性能と価格の最適解を巡る競争
今後5年にわたり市場の覇権を握るのは、
・走行距離と販売価格の比率を最適化し
・実用的な性能を最も効率よく提供する
メーカーだろう。EVが特別な存在ではなくなった2026年の市場において、購入層は明確にふたつの勢力へ分かれていく。一方は、徹底した維持管理コストの低減を追求し、バッテリー技術の優位性を背景に低価格戦略を仕掛けるBYDのような勢力だ。
もう一方は、ホンダのように国内の生活環境への深い適合性と、長年培われたサービス網による安心感を付加価値とする勢力になる。この二極化は、軽自動車という枠組みを超えた、移動の最小単位を巡る国際的な標準化競争の表れに他ならない。
先行者利益を享受してきた日産は、走行性能を抜本的に高めた次世代モデルを早期に投入できなければ、急速に市場での存在感を失うことになる。航続距離の不足は、中古車市場における車両価値の下落を招き、ブランド全体の信頼性を毀損する悪循環を生むからだ。
軽EV市場は、もはや目新しさを競う段階を終え、道具としての完成度を競う日中両陣営による熾烈な生存競争へと収束しつつある。航続距離300km弱、補助金適用後の実質価格170万円台という基準は、2026年における市場参入の最低条件として定着した。
トヨタのbZ4Xが四半期で3684台を販売し前年同期比13倍という驚異的な伸びを記録したことや、テスラが約2600台の安定したシェアを維持している現状を鑑みれば、軽EVという限定的なカテゴリーもまた、普通車EVの価格破壊と性能向上による圧力を無視できない。
BYDの「ラッコ」が示すように、日本の生活様式をデータとして解析し、それをソフトウェアと物理の両面で凌駕しようとする外資の攻勢は、日本メーカーにとってこれまでにない脅威になる。デザインのみを整える段階は過ぎ去り、
「顧客の潜在的な不便」
を解消する新たな体験価値を提示できたメーカーこそが、次世代の移動インフラにおける勝者になるだろう。