「180kmでは冬を越せない?」日産サクラ急落が示す、軽EV300kmの“防衛ライン”――先進性より確実さを選ぶマジョリティ層の決断
生活動線を巡る攻防
比亜迪(BYD)がホンダのN-BOXをベンチマークとし、軽ハイトワゴン型のEV「ラッコ(RACCO)」を2026年後半に投入する決定を下したことは、日本独自の軽自動車市場が
「海外資本による徹底した分析の対象」
になったことを示している。海外勢が日本の過酷な道路環境や生活動線を研究し、その成果を製品に反映させる動きは、国内メーカーが独占してきた聖域の崩壊を意味する。
欧州市場で培われた高い親和性や都市部での適合力を武器に、彼らは日本の軽文化を解体し、自らの技術体系で組み立て直そうとしている。これに対抗する国内勢の防衛策は、数値化しにくい身体的な最適化をいかに維持できるかにかかっている。
ホンダをはじめとする国内メーカーは、高齢者や育児世帯の日常的な挙動を反映したシートの座り心地、ミリ単位で調整された後席スライド、そして極限まで追求された荷室効率によって、海外勢の攻勢を押し止める戦略をとっている。
海外メーカーは大画面を中心としたデジタルインターフェースやコネクテッド機能を中核に据えてユーザーの関心を惹きつけるが、国内メーカーは操作の直感性や小回りの良さ、長時間乗車でも疲労を蓄積させない座り心地を優先する。この開発方針の対立は、デジタルによる利便性と、身体的な充足感のどちらを生活者が優先するかという選択の境目になっている。
ユーザー体験の優先順位が変化するなかで、日本メーカーは作り手側の論理を捨て、生活シーンに密着した付加価値を見直さなければならない。大画面による情報の多さは、狭い路地での操舵や頻繁な乗降という実体験の質を必ずしも向上させない。
ハードウェアの耐久性と使い勝手を極限まで研ぎ澄ませ、顧客の潜在的な課題を解消する体験価値を提供できるかどうかが、ブランド構築とイノベーションの成否を分ける。真の意味でのデザイン経営、すなわちデザインと機能の統合的な追求が、2026年以降の生存条件になるだろう。