「180kmでは冬を越せない?」日産サクラ急落が示す、軽EV300kmの“防衛ライン”――先進性より確実さを選ぶマジョリティ層の決断

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2025年末、国内EV市場は日産サクラからホンダN-ONE e:へ主導権が移った。航続距離295kmと補助金後170万円台の軽EVは、日常移動の安心性と家計負担の軽減で支持を獲得し、生活基盤としての価値競争が始まった。

家計構造を変えるEV

厚木市(画像:写真AC)
厚木市(画像:写真AC)

 都心へ直結する有料特急が走る厚木、秦野、平塚といった郊外都市の生活圏では、路線バス網の縮小にともない、ひとり一台の車両保有が避けられない状況にある。

 こうした地域において、ガソリン車の維持費は

「家計を恒常的に圧迫する固定負債」

である。外部要因である原油価格の変動に家計の余力が左右される脆弱な構造が生まれている。移動が生活に組み込まれている以上、燃料費は削ることのできないコストであり、それが家計の自由度を奪う要因になっている。

 この固定的な支出構造に対し、軽EVへの転換はエネルギー管理の主導権を家庭に取り戻す手段になる。安価な夜間電力などを活用することで、移動に要するコストを予測可能かつ制御可能な変動費へと作り変えることができるからだ。

 2026年の補助金130万円を適用した際の実質価格は、スズキのeビターラが399万円から272万円台へ、ホンダのN-ONE e:が約300万円から約170万円台へと大幅に引き下げられる。この価格水準は、ガソリン車の新車や高年式の中古車相場に合流するもので、購入時の経済的障壁を事実上無力化している。

 購入から5年間の総走行コストを俯瞰すれば、電力料金の安さに加え、税制面での優遇や車検時の交換部品の少なさが効力を発揮し、ガソリン車との初期費用の差額を回収することは十分に可能だ。さらに、災害時における非常用電源としての付加価値は、車両を移動手段という消費対象から、家庭のエネルギーインフラを支える安全資産へと昇華させている。

 軽EVの導入は、生活の足を確保する行為を超え、家計のレジリエンスを高めるための合理的な投資判断になっているのだ。

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