「残クレ」を利用していい人・絶対にダメな人――決定的な分岐点とは何か? 5人に1人が選ぶ「所有しない」買い方の実態

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新車購入者の約5人にひとりが選ぶ残価設定型ローン。ネット上では「見栄購入」「返却リスク」への批判が飛び交うが、実態は負債管理と市場構造を反映した高度なローン仕組みである。

残クレ拡大の構造的要因

 残クレとは何か。車両価格の一部を将来の下取り想定額として据え置き、残りだけを分割で支払う仕組みだ。車の名義は信販会社にあり、利用者は使う権利を持つ立場になる。この仕組みが広がった背景には、社会全体の構造変化がある。

 新車価格は上がり続けてきた。安全装備の高度化、電動化対応、半導体コストの上昇。一方で、中間層の可処分所得は大きく増えていない。その結果、消費者の関心は購入総額から、毎月のキャッシュフローをどう管理するかへと移っていった。

 技術面の変化も影響している。車は電子制御が増え、修理費は高くなった。中古車価格は輸出規制や盗難、需給の変動に左右されやすい。将来の下取り価格を読む難しさは、以前より高まっている。

 それでも、残クレをめぐる議論は噛み合っていない。ひとつは、話が善悪の二択に偏っている点だ。残クレは悪、現金一括は正しい。そんな整理では、仕組みの中身を考える余地がない。もうひとつは、情報の不透明さが放置されていることだ。販売の現場では月々の支払額が強調されやすく、総支払額や想定外の負担が生じる場合の説明は十分とはいえない。

 さらに興味深いのは、メーカーや販売店が残クレを前提に生産や納期を調整する傾向を強めている点だ。これは実のところ、メーカー側が数年後の良質な中古車在庫を確保し、自社ブランドの流通価格をコントロールするためのサプライチェーン戦略でもある。人気車種ほど、特定のローン仕組みと組み合わせた販売が進みやすい。消費者は知らないうちに、メーカーの市場統制エコシステムに組み込まれている。

 論点は利用者の意識の問題ではない。仕組みの設計思想と、情報をどう提供するかの透明性にこそ本質がある。

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