走る時限爆弾「無保険トラック」 安すぎる運賃が招いた安全網の綻び――現場が追い込まれた“2択”の正体
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任意保険に入れない事業用トラックが、物流現場で静かに増えている。2024年度の運送業倒産は328件に達し、保険料は最大2倍に急騰。無保険走行はモラルの問題ではなく、運賃構造と責任分担の歪みが生んだ産業リスクだ。
数十万円回避が招く巨額リスク

目先の数十万円という支出を避けるために、数億円規模の賠償リスクを抱え込む判断は、経営合理性の観点から見て到底正当化できるものではない。無保険車両を公道で運行させる行為は、企業コンプライアンスの枠組み以前に、交通社会を支える一員としての社会的責任を放棄しているに等しい。
しかし無保険走行の問題を、個別の運送会社によるモラルハザードとして処理するだけでは、事態の本質的な解決には結びつかない。その背景には、
・長らく放置されてきた運賃水準
・不適切な取引慣行
といった、サプライチェーン全体の構造的な問題が横たわっている。安全対策に必要なコストが運送会社に一方的に押し付けられてきた結果として、存続のために無理のある選択を強いられる状況が固定化されてきた側面は否定できない事実だ。
今、求められているのは、荷主を含むすべての関係者が
「安全には相応のコストがかかる」
という大前提を共有することである。適正な運賃設定と、デジタルデータを活用した安全投資を両立させる仕組みを構築しなければ、事故リスクを根本から引き下げることは叶わない。どちらか一方が欠ければ、無保険走行という重大なリスクは温存され続け、結果として物流網全体の信頼を失墜させることになる。
無保険事故は偶発的な不運ではない。構造的な歪みが生み出した必然の帰結である。サプライチェーン全体で責任と負担のあり方を抜本的に見直さない限り、この危うい連鎖を断ち切ることはできない。