“西武王国”崩壊から20年――「鉄道は所沢、経営は都心へ」 沿線の常識を捨て、あえて拠点を切り分けた33年目の決断

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西武グループは1986年に所沢に本社を移転後も、本店所在地は池袋の旧本社ビルのままだった。2019年、持株会社や不動産・ホテルの主要3社が「ダイヤゲート池袋」に移転し、約400人のスタッフが池袋へ戻った。沿線と全国の現業部門を踏まえた本社最適化で、池袋・所沢の2拠点体制が定着した。

本社最適化の範囲

住友商事との共同事業となる広域集客型商業施設「エミテラス所沢」(画像:住友商事)
住友商事との共同事業となる広域集客型商業施設「エミテラス所沢」(画像:住友商事)

 ただ、3社の本社移転による所沢への影響は、危惧されていたほど大きくはなかった。

 第一に、西武鉄道や西武バスなど沿線に密着した交通サービス業は引き続き本社を所沢に置いている。所沢は西武池袋線と西武新宿線が交差する主要幹線上にあり、緊急時の対応を含め、鉄道の現業部門を管理・統括するには池袋より適している。

 また、西武グループは所沢駅西口土地区画整理事業で、住友商事との共同事業として広域集客型商業施設「エミテラス所沢」を2024年9月に開業した。3社の本社移転後も、所沢への投資を続けている。

 一方、池袋に移転した3社のうち、西武HDは持ち株会社であり、交通や観光、不動産などの現業部門は持たない。現西武・プリンスホテルズワールドワイドは全国展開するホテルチェーンで、現業部門も全国に分散している。現西武不動産は沿線地域での事業比重は比較的高いものの、軽井沢での別荘分譲など、現業部門は沿線地域に限定されていない。

 3社の池袋移転は、現業部門が沿線地域なのか全国なのかに応じて、本社所在地を最適化した結果といえる。

 3社が入居する「ダイヤゲート池袋」は、西武池袋線の線路を跨ぐ形で建設された。壁面は鉄道のダイヤグラムをモチーフにしたデザインで、西武グループのシンボル的存在となっている。オフィスフロアは15階建てで、3社が占めるのは5フロア、残りは賃貸オフィスとして運用されている。このビル自体も、西武グループにとっては資産価値の高い「売り物」のひとつである。

 大手私鉄の先駆けとして沿線中間都市に本社を移転し、さらに早期に2拠点体制を整えた西武グループ。今後、他の大手私鉄がこの動きに追随するかが注目される。

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