欧州EVシフトは本当に「日本車潰し」だったのか?――単純な二元論では語れない、欧州政策・中国台頭・日本戦略の複雑なリアリティ
筆者への反対意見

しかし、欧州のEV規制は、結果として日本メーカーに不利に働いているとの見方も根強い。とりわけ、EV分野で出遅れた日本勢にとっては、制度面で不利な条件が重なったことは否定できない。
CAFE規制(企業別平均燃費規制。メーカーが販売した全車両の平均燃費で目標達成を義務付ける制度であり、未達成時には多額の罰金が科される)やゼロエミッション車(ZEV)義務化は、ハイブリッド技術に強みを持つ日本メーカーを相対的に不利な立場に置く制度の作り方であり、
「結果としての日本車潰し」
と受け止められても不思議ではない側面を持つ。
実際、EVシフト初期において日本車の市場シェアが低下した局面もあり、これをもって欧州が意図的に日本を排除しようとしたと見る向きもある。欧州は主要幹線道路への急速充電網整備や、大型車向け充電設備の設置比率を高める構想を打ち出していたが、日本側はこうした動きに対し慎重姿勢を崩さず、国際標準化の議論を主導するには至らなかった。このため、欧州側に「日本は本格参入してこない」という認識が生まれた可能性は否定できない。
一方で、欧州のEV政策そのものも理想先行の側面を抱えていた。インフラ整備や電池供給体制の成熟を過大評価した結果、制度の青写真と実装能力の間に乖離が生じ、域内の部品サプライヤーや雇用に歪みを生んだとの指摘もある。仮に日本潰しが主目的であったなら、自国産業にこれほどの負荷を与える制度の形にはならなかったと見る余地もある。
実際、欧州は2035年のEV一本化方針を事実上後退させ、多様なパワートレインを容認する方向へと舵を切り始めた。結果として競争力を大きく高めたのは中国勢であり、価格面でも欧州製を大きく下回る水準で市場を席巻している。欧州のEV政策は、日本よりもむしろ中国に有利に働く構造を生んだといえる。
こうした経緯を踏まえると、欧州の政策転換を単純に「日本潰し」と断じる見方には限界がある。むしろ、誰に競争上の利益が帰したのかという点、すなわち中国優位を許した構造そのものを検証する視点こそが欠けている。日本に不利な結果が生じたことと、意図的な排除があったかどうかは切り分けて考える必要がある。