北陸新幹線5.2兆円の岐路! 「8ルート」「直通性」で浮かぶ本質、誰が損し誰が得するのか?

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北陸新幹線敦賀以西延伸は、2.1兆円から最大5.2兆円へ膨らむ建設費を背景に、8ルートの再検討へ。JR西日本の経営戦略、地域振興、国費投入の三条件をどう折り合うかが、次世代インフラのあり方を左右する。

筆者の意見

2025年10月29日発表のプレスリリース「輸送密度2000人/日未満の線区別経営状況に関する情報開示」(画像:JR西日本)
2025年10月29日発表のプレスリリース「輸送密度2000人/日未満の線区別経営状況に関する情報開示」(画像:JR西日本)

 筆者(高山麻里、鉄道政策リサーチャー)は、今回の敦賀から京都・大阪への延伸ルート選定は、事業主体であるJR西日本の将来的な路線ネットワーク再編、赤字ローカル線の補完の可能性を軸に評価すべきだと考える。

 JR西日本は北陸新幹線の運行だけを行っている訳ではないので、もっと俯瞰的に見る必要がある。JR西日本は1987(昭和62)年4月1日の国鉄の分割民営化で担当エリアが極めて広くなり、しばしば

「分割バランスの不均衡性」

が問われる事態となっている。北陸エリアから在来線は下関、新幹線は博多までがJR西日本の管轄である。一方でJR西日本は経営資料を2024年に公表している。管轄エリアが広いので営業係数悪化路線も多い訳だ。

 JR西日本という事業主体で見る場合には、北陸新幹線単独での採算性議論は不十分である。しかし実態としては単独での採算性議論に終始している状況だ。

 日本海に面する京都府北部地域は、“海の京都”というブランディングが進む。綾部市、京丹後市、福知山市、舞鶴市、宮津市、伊根町、与謝野町の7市町村地域を合わせた名称である。

 京都府による「観光入込客数及び観光消費額(令和4年)・海の京都観光圏「海の京都DMO」観光マーケティング調査データ」等によると、宿泊客数では京都市と海の京都エリアで約10倍の開きがあった。観光消費額では、京都市が海の京都エリアの約21倍もの消費額になっていた。

 さらにいえば、2021年2月度に更新の海の京都観光マーケティング調査データ等によると、海の京都エリアの旅行者は圧倒的にリピーターが多く、新規の観光客が少ないことがわかっている。リピーターとして定着させる魅力がある観光地であるが、新規の観光客を獲得させないといけない。これが海の京都エリアである。

 これは隣接する福井側の小浜でも同じである。小浜は民家を改装した宿泊施設やグルメが人気だが、やはり以前調査した時はリピーターが多いことがわかっている。福井県は小浜・京都ルートを変わらず推しているが、小浜線沿線サイドの観光地エリアとしてのポテンシャルを伸ばす意欲は見え隠れするし、京都府としても総体的な集客は歓迎であろう。北部地域の海の京都へのリピーターやファンが多いデータがあるからなおさらである。

 JR西日本もこの観光ポテンシャルを生かした沿線開発と収益化は図りたいはずである。福井県の大阪開業の試算は以下のサイトに掲載されているが、交流人口が1年に約1910万人増加として期待を寄せている。同様に海の京都にも交流人口増加の期待が集まる。

 亀岡や舞鶴を通るルートで京都市内回避という案は政治的妥協案ではなく、“海の京都”観光圏での定住人口及び交流人口の定着、観光を中心にした地域経済への効果を期待できる。

 米原乗り換え案は「格下げ」ではなく、東海道新幹線の既存輸送力(米原~京都・新大阪は時間16両編成で2本程度)を活用するコスト最小化モデルで魅力は否定されない。全線直通に固執する方が中途半端な投資となりうる。ただし沿線開発の可能性は短距離で限られるのが米原経由である。

 総括すると、日本海側の小浜エリアや海の京都エリアでのリピーターを生み出しうるポテンシャルを生かした地域開発と北陸新幹線利用者増加を考える上では、小浜と舞鶴・亀岡経由で大阪を目指すコンセプトは一理あるということだ。京都駅を通らないことも重要で、京都~大阪の重複による様々なコストを考えなくてよい。

 米原経由であればメンテナンスコストを想定しても、米原乗換え案を推したい。JR東海のインフラを活用することでエコの推進も可能である。

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