高級車を飾った「名脇役」いずこへ? ボディ一体成形が変えた自動車デザインの常識
- キーワード :
- 自動車
かつて高級車の象徴だったサイドモールが姿を消しつつある。製造技術の進化やデザイン潮流の変化で装着車は減少する一方、アフターマーケットは2024年に468億ドル規模まで拡大し、新たな保護・装飾技術も登場している。
自動車デザインの流行変化

サイドモールの減少には、自動車デザインのトレンドの変化も大きく影響している。1990年代後半から2000年代にかけて、バンパーとボディの一体化やボディ同色化が進み、よりシンプルで洗練されたデザインが主流となった。クロームや黒樹脂のモールを多用した従来のスタイルからの転換であり、現代的な美観と機能性の融合を象徴している。
1980年代後半からの空力志向の高まりも、サイドモール減少を後押しした。角張った形状から流線型のボディへ移行し、空気抵抗を減らすことで燃費向上を図る設計が増えたのだ。これは環境規制や燃費基準の強化と合致し、現代の開発思想に沿った設計変更といえる。結果として、ボディ表面の突起を極力減らす流れが強まり、サイドモールの存在意義は相対的に小さくなった。
また、製造コスト削減の観点も無視できない。部品点数の削減は組み立て工程の簡素化や品質管理の効率化につながり、企業にとって合理的な選択となる。加えて、消費者の嗜好の変化も背景にある。シンプルで流れるようなデザインは、現代の都市環境やライフスタイルにマッチし、高級感や上質感を別の手段で表現する方向が重視されるようになった。
このように、デザイン潮流、環境規制、消費者の価値観、製造コストの4つの要素が重なり合うことで、サイドモールの減少は自然な流れとして進んだといえる。