高級車を飾った「名脇役」いずこへ? ボディ一体成形が変えた自動車デザインの常識

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かつて高級車の象徴だったサイドモールが姿を消しつつある。製造技術の進化やデザイン潮流の変化で装着車は減少する一方、アフターマーケットは2024年に468億ドル規模まで拡大し、新たな保護・装飾技術も登場している。

プレス技術進化によるデザイン変化

プレス技術の進歩によりボディ成型が高度化(画像:写真AC)
プレス技術の進歩によりボディ成型が高度化(画像:写真AC)

 サイドモール装着車が減少した背景には、

・金属プレス技術の著しい進化
・自動車設計の考え方の変化

がある。近年の高精度多段プレスやデジタル制御技術の導入により、かつてサイドモールで表現されていた立体的な意匠や保護機能が、ボディ一体成型で実現可能となったのだ。

 この技術進歩により、部品点数の削減や組み立て効率の向上が可能になり、品質管理もより安定する。部品が減ることでサプライチェーンも簡素化され、企業にとっては製造コストの最適化や利益改善にも直結する。消費者の目線から見ても、高精度プレスで仕上げられたボディは外観品質が高く、サイドモールがなくても十分な耐久性と美観を備えることになる。

 塗装技術の進歩も、サイドモールの必要性を下げる一因となった。

・高分子樹脂系塗料
・多層コーティング技術

の発展により、耐擦傷性や耐候性が飛躍的に向上し、日常的な小さな接触や衝撃からボディを守る性能が向上した。これにより、サイドモールが担っていた保護の役割は、ボディ自体の性能で十分に代替できるようになったのである。

 自動車産業全体で見ても、プレス加工市場は2023年に1090億5000万ドル規模に達し、2032年には1620億5000万ドル規模に拡大する見通しがある。このように、製造技術の進化は単に部品設計にとどまらず、産業全体の効率化や競争力向上に寄与しており、サイドモールの減少はその影響の一端として理解できる。

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