トヨタの禁断領域? レクサスLS「6輪ミニバン」はF1以来の挑戦なのか――車両規格も揺るがす「富裕層モビリティ」の再定義

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2025年10月、トヨタは5ブランド戦略を発表。レクサスLSは6輪ミニバンに転換し、後席快適性や走行安定性を高めつつ富裕層向け移動体験を再定義。象徴性と実用性の両立が試される挑戦である。

空間価値の極大化

Mercedes-Maybach S 680 Edition Northern Lights(画像:メルセデス・ベンツジャパン)
Mercedes-Maybach S 680 Edition Northern Lights(画像:メルセデス・ベンツジャパン)

 レクサスがショーファーカーを目指す理由は、中国勢や欧州勢が

「後席体験競争」

に参入している点にヒントがある。各社は高級車にロングバージョンを設定し、車両後部を拡張したモデルを次々と投入している。空間と演出が新たな自動車価値を決める要素として台頭しているのだ。

 トヨタが公開したレクサスの6輪ミニバン構想は、空間価値の極大化を示唆している。「LS = Luxury Space」という再定義は、室内の広さを超え、富裕層の移動空間に独自の価値を見出す構造転換である。6輪駆動構造への拡張により、走行安定性や快適性を高めつつ、後席での滞在体験や演出空間を向上させる戦略が取られている。

 6輪ミニバンの位置づけは、

「アルファードより上級で、センチュリーには届かない中間層」

にあたる。国内市場だけでなく、アジアや中東市場が主戦場となり、専属運転手付きの富裕層を中心としたショーファーカー市場への本格参入が見込まれる。この市場参入は、単に新モデルを追加するのではなく、レクサスブランド全体の価値向上とブランド体験の差別化を狙った戦略的な意味を持つ。

 加えて、6輪ミニバンは空間の物理的拡張だけでなく、上質な移動体験の演出、乗員間のプライバシー確保、収納や装備の利便性向上なども組み込まれており、富裕層が求める「移動の価値」を総合的に高める設計思想が反映されている。これにより、レクサスは

「移動体験そのものを提案する新たなブランド像」

を提示することになる。

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