トヨタが家庭向けEV充電器市場に参入! これで「充電インフラ責任論」に終止符を打てる? 普及率1.5%の壁を破る「垂直統合」の行方とは

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国内EV普及率はわずか1.5%。家庭用充電網の遅れと都市部集合住宅の課題が市場を縛る中、トヨタは電動車と6kW充電器のセット販売で利便性と安心感を提供。制度疲労を抱える日本EV市場の突破口となるか注目される。

日本EV市場の構造疲労

トヨタのロゴマーク(画像:AFP=時事)
トヨタのロゴマーク(画像:AFP=時事)

 トヨタ自動車は今秋、家庭用の電気自動車(EV)充電器を発売する。国内でEVを普及させるには、自動車メーカーが充電インフラと一体で整備する必要があると判断した。トヨタ系列の販売店では、電動車と充電器をセットで販売する。設置や保守は販売店を通じ、トヨタホームなどの専門業者に委託する仕組みだ。

 国内のEV普及率は「1.5%程度」にとどまる。2024年度の乗用車販売台数は約386万台だったが、EVは5.7万台にすぎない。プラグインハイブリッド車(PHV)を含めても10万台に届かず、普及率は2%台にとどまる。EV販売の内訳を見ると、輸入車と軽自動車がそれぞれ約4割を占め、残る約2割のうち日産が7000台余り、トヨタはわずか1000台ほどにとどまる。欧州では新車販売の約2割が電動車であり、中国では半数近くを占めるのと比べ、日本市場の低迷は際立つ。

 国内のEV充電スタンドは、2025年3月時点で約2万6000基ある。このうち急速充電(CHAdeMO)は約1万3000基だが、利用者からは「スタンド不足」「故障が多い」との不満が寄せられている。特に家庭用充電設備は課題が多い。都市部の集合住宅では導入が進まず、購入に踏み切れない負の連鎖が続く。補助金制度も自治体によって差があり、設置コストは高く実用性に乏しい。こうした要因が、EV普及の妨げになっている。

 さらに構造的な問題も表面化している。エネルギー政策とEV普及政策が十分に連動していないため、制度間の齟齬が現場に負荷をかける。自治体や販売店は補助金制度や施工手続きの複雑さに対応する必要があり、ユーザーに適切な案内が届きにくい状況だ。また、充電器メーカー、施工業者、自動車メーカーの役割分担が曖昧で、

「責任の所在」

が不明確なままインフラ整備が進められている。既存販売店はEVを「売る」ことに専念する傾向が強く、充電インフラやアフターサポートの経験が乏しい。結果として、消費者が安心してEVを購入・維持できる環境は十分に整っていない。

 このように、政策、制度、産業構造の連携不足が生む「制度疲労」が日本のEV市場に色濃く残る。単に充電器や補助金の数を増やすだけでは、根本的な問題は解消されない。ユーザーの不安や購入ハードルの高さ、販売店や施工業者の経験不足といった定性的要因が絡み合い、日本のEV市場の成長を長期的に阻む構造となっている。

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