山陽新幹線「新尾道駅 = 失敗例」は本当か? 1988年開業以来揶揄され続けた駅、その存在意義を改めて考える
尾道を訪れる観光客にとって、新幹線の最寄り駅は新尾道駅ではなく福山駅という現実。しかし、観光客以外に目を向ければ、その「風景」は変わってくる。
新尾道駅の立地価値

上記の理由からすると、新尾道駅は「失敗例」とされる。しかしここではあえて、新尾道駅の存在意義を考えてみたい。
まず駅周辺の環境を見てみる。尾道市中心部から約3km離れているものの、駅周辺は新幹線新駅にありがちな“無人の荒野”ではない。中心市街地からほぼ途切れなく住宅が続き、幹線道路である国道184号線も通っている。
駅の北東側徒歩圏内には小規模なニュータウンの分譲地があり、北西約2kmには広島県立びんご運動公園がある。その北には尾道工業団地や尾道流通団地も位置する。駅周辺は住宅や施設が連続しており、潜在的な利用者層が存在する環境だ。
路線バスは、駅が市中心部と市北部を結ぶ幹線道路沿いにあることもあって、本数は比較的多い。高速バスについては、かつて複数路線が乗り入れていたが、2025年時点では福山から新尾道駅を経由し松山に向かう路線のみとなっている。
道路網も整備されている。駅南側約1kmには高規格道路の国道2号線バイパスが走り、北側約6kmには山陽自動車道が並行している。高速道路や幹線道路は新幹線の「競合」となる一方で、レンタカーや駐車場などと組み合わせれば補完関係も生じる。
駅周辺の施設や交通網が実際に乗降客数や地域活性化にどれほど寄与しているかは明確でない。しかし、これらの存在は潜在的な需要の発生源となる可能性がある。そう考えると、新尾道駅の立地は必ずしも悪いとはいえない。