米国「475人拘束事件」で暴かれた外資ビザリスク! EV電池生産・外資投資の制度矛盾とは

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米国の人材不足とビザ制約が浮き彫りとなり、外資投資の持続可能性が問われる重大事件となった。

サプライチェーン統治の課題

自動車(画像:Pexels)
自動車(画像:Pexels)

 米国の労働市場には構造的な課題がある。失業率は4%前後だが、製造業では熟練工の不足が慢性的に続く。EVの分野では、

・モーター
・インバーター
・電池
・充電設備
・車体設計
・デザイン
・マーケティング

など幅広い人材が必要だ。国際的にも、EV人材は十分に育っていない。米国の大学でも専門教育は十分とはいえない。

 米国では技術力の不足に対し、専門人材が高い報酬を要求する傾向がある。そのため外資企業は自国からの派遣に頼らざるを得ない。これはグローバル・バリューチェーンの脆弱性を示している。EV電池の生産は高度な国際分業を前提とする場合が多い。装置メーカーの技術者は不可欠だが、ビザ制度は実態に追いついていない。今回の事件は韓国側の不満を呼ぶ要因のひとつになった。

 一方で米国政治にも課題がある。トランプ政権は外資の投資は歓迎するが、移民法遵守を重視する。しかし自国企業優先の姿勢も見え隠れする。健全な経済競争が望ましいのに、外資には不満が残る構造だ。今後は韓国企業だけでなく、TSMC(台湾)や日系企業にも圧力がかかる可能性があり、慎重な対応が求められる。

 企業統治とリスク管理の不備は早期に改善する必要がある。現代自動車とLGは

「直接雇用ではない」

と主張しているが、サプライチェーン全体の統治責任から逃れることはできない。責任は今後も問われるだろう。

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