スポーツカーの「スポーツ」とは何なのか?

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国内で純粋な2ドア・2シーターは少ない。規制対応で開発費が高騰する中、SUVやスポーツセダンまで拡張されるスポーツカー市場の現状と、希少価値が中古価格に反映される背景に迫る。

消えゆく本物のスポーツカー

自動車(画像:Pexels)
自動車(画像:Pexels)

 1960年代の日本では、ホンダS500やトヨタ2000GTが「夢を買う車」として登場した。だが現在、国内で純粋な2ドア・2シーターのスポーツカーは数えるほどしかない。ホンダNSX(2022年で生産終了)、日産フェアレディZ、マツダ・ロードスターなどだ。

 需要の小ささに対して、開発コストは安全規制や環境規制対応のため高騰している。自動ブレーキ、排ガス規制、騒音規制、衝突試験対応。量産効果が働きにくいスポーツカーは、企業収益に貢献しにくい。

 このためメーカーは「スポーツカーの定義」を広げざるを得なかった。ハイパワーSUV(ポルシェ・カイエン、ランボルギーニ・ウルス)、スポーツセダン(スバルWRX、BMW M3)、ホットハッチ(ルノー・ルーテシアRS、GRヤリス)。本来の「軽量・小型・2座席」という枠を外れ、実用車に高性能エンジンと足回りを組み合わせることでスポーツの看板を掲げる戦略が主流になった。

 この拡張は販売戦略としては合理的だが、言葉の価値を下げるリスクをともなう。スポーツを名乗るモデルがミニバンやSUVにまで及ぶと、顧客の期待が曖昧になる。日産セレナNISMOやトヨタ・アルファードの「スポーツ仕様」が生まれる背景には、メーカーの販売台数確保の事情がある。だが本質的に「運転する楽しみ」を目的とする車と、ファミリー向け車に装飾的なスポーツ性を加えたモデルを同列に語るのは無理がある。結果として、純粋なスポーツカーを求める層は

「これは“スポーティーカー”であってスポーツカーではない」

と批判している。中古市場で90年代車両が高騰する背景には、この不満が反映されている。これは新車供給の減少と「本物のスポーツカー」への希少価値が価格に転化した結果である。

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