白物家電を捨て、「鉄道」で世界を獲る日立! タレス買収・「ルマーダ」が切り拓く「2兆円構想」の可能性とは
DX人材供給力の競争力

もちろん、懸念材料もある。まず、6兆2000億円に上る受注残の収益化には遅延リスクがともなう。プロジェクト遂行にあたっては、納期遅れやコスト増といった課題も想定される。資材価格の高騰は、日本国内の建設・製造現場を見れば明らかだ。
競合環境は一段と厳しさを増している。アルストム、シーメンス、ボンバルディアといった欧州の大手鉄道メーカーが、インフラ×DX分野に本格参入してきた。前述のとおり、アルストムによるボンバルディア鉄道部門の買収もあり、大手同士の再編も現実味を帯びる。欧州市場では、受注競争や価格引き下げ圧力の激化が避けられない。こうした厳しい競争環境は今後も続く見通しだ。
さらに、鉄道事業者自身もデジタルサービスへの転換を進めるには、組織構造の変革が求められる。専門人材の確保も不可欠だ。いい換えれば、顧客企業に対して、デジタルサービスの運用を担える人材まで提供できる体制が、メーカー側にも必要とされる。
為替の変動や地政学的リスクの影響も無視できない。特定地域への依存は大きなリスク要因となる。今後は、自律分散型のポートフォリオ戦略によってリスクを平準化し、柔軟に対応することが求められる。
前述のとおり、日立は鉄道インフラ事業への集中を進める一方で、国内の白物家電事業の売却を検討していると報じられている。すでに複数の企業に打診を行ったともされる。
白物家電は売り切り型モデルであり、競合も多い。メンテナンスや買い替えによる収益も限定的だ。耐久性を重視すればするほど、買い替えサイクルが延び、利益を上げにくくなるというジレンマもある。
さらに、家電事業は日立が注力する「ルマーダ」などの社会インフラ向けデジタル基盤事業との相乗効果が乏しい。このため、収益性が高く安定した鉄道事業へのシフトは、集中と選択の観点からも合理的な判断といえる。
AIやデータを活用した知的財産の提供は、ノウハウを売るモデルとして収益性も高い。競合も限定的であり、中長期的な成長戦略としての可能性は大きい。